ワイン街道のレストラン 砂漠のオアシス「チャピチュリ」

バスク地方からナバーラにかけてワイナリー巡りをするなら、オアシスは「チャピチュリ」。ピレネー山脈に向かって緑のスペインを北上するならいざ知らず、南下する風景はどんどん乾いてくるから、とりわけ美味しい食事と小ぎれいな部屋を用意してくれる宿が必要です。

チャピチュリは、ヨーロッパ最大の半砂漠地帯、ラス・バルデナス・レアレス自然公園の入り口に、ポツンとたたずむ古民家をリノベーションしたレストラン&ホテル。近くには両極端な個性際立つ2つのワイナリーがあります。一つは12世紀以来今でも修道士たちが神への奉仕の一環としてワイン造りをしいるシトー派修道院、モナステリオ・デ・サンタ・マリア・ラ・レアル・デ・ラ・オリバ。もう一つは、根っからの自由人たちの自然派ワイナリー、ボデガス・アスル・イ・ガランサ

この辺りはメジャーなガイドブックで紹介されることはありませんが、剝き出しの大自然や人間の叡智が築いた歴史的大建造物、そして美味しいワインと食事が楽しめる、まさにスペインの醍醐味が体験できる場所。私は初めて訪れた時から、この圧倒的なスケールの風景にずっと魅せられています。

さて、チャピチュリというレストランの名前。不思議な響きですね。“TXAPI-TXURI”という綴りを見れば、バスク料理のお店だと分かります。バスクのように海こそ近くにはありませんが、野菜の名産地であるナバーラの新鮮な野菜をふんだんに使った料理や(これが日本人にはうれしい)、アラゴン川のマス料理、羊飼いから買った新鮮なラム肉や、噛むほどに旨味の染み出る赤身の牛肉、余分な脂が炭火ですっかり落ちた絶品の豚肉といったお肉料理を地元の赤ワインで流し込むのが最高です。外には緑豊かなテラス席があるので季節の良いときはここで食事すると気持ちがよさそう。ワインの買い付けはだいたい冬なので、私はそんな良い季節には行ったことがありませんけど!

Hostal Txapi Txuri
 Tel. +34 948 715 808
 Email: reservas@txapitxuri.com
 住所 : Santa Ursula 63 31313 – Murillo El Fruto (Navarra)

ホテルのウェブサイトを開いて下に少しスクロールした所に、1分32秒のとても美しい動画があるのでぜひご覧ください。きっといつか行ってみたくなりますよ。

カバとお洒落にスペインのフライドポテト!

パタタス・ブラバス/Patatas Bravas

カリカリポテトが辛味の効いた旨味たっぷりのトマトソースと出会ったら?ーーーみんな大好きな定番タパスになりました。このレシピの始まりはバルセロナやマドリッドなど諸説ありますが、その名を直訳すると「辛いポテト」。といっても、日本人にとってはさほど辛さを感じません。ヨーロッパの人が言う“スパイシー”は、「あれ?」と思うほど穏やかです。

じゃがいもは小口に切って軽く茹でてから揚げるのがコツ。さらに余裕があれば、5分ほど置いてから二度揚げもおすすめです。こうすと中は粉ふきいものようにしっとりと、外はカリッと仕上がります。

ブラバスソースは簡単なので、手作りで自分好みに味を調整してみましょう。アリオリソースをかけると完成です。ビールも良いですが、スペインのカバに合わせるとオシャレですね!

ブラバスソース – Salsa Bravaの材料:
 ・玉ねぎ みじん切り
 ・にんにく みじん切り
 ・トマト缶
 ・パプリカパウダー(辛口)
 ・チリパウダー
 ・パセリ みじん切り
 ・砂糖、塩 少々

オリーブオイルで玉ねぎとにんにくのみじん切りを炒めたら(絶対に焦がさないこと!)、パプリカパウダーとチリパウダーを加えて軽く炒めます。そこにトマト缶を投入し、塩と砂糖を少々加えて煮詰めていきます。トマトの水分が無くなるほど旨味が凝縮するので、お好みで調整してください。滑らかな口当たりがおきなら、最後にブレンダーにかけて仕上げましょう。

アリオリソース – Salsa Alioriの材料:
 ・卵黄
 ・オリーブオイル
 ・塩
 ・レモン果汁(またはシェリービネガー)
 ・すりおろしにんにく

すべての材料をブレンダーにかけるだけ。シンプルなのでぜひ手づくりしてみて下さい。これだけでご飯が何杯も食べられるほど美味しいですよ。

【TIPS】オリーブオイルは必ずエクストラ・バージン・オリーブオイル(EVOO)を使いましょう。EVOOは酸化に強く上質なものだと9回は使えるので、少々高くても案外コスパが良いのです。何より油切れもよく素材がカラッと仕上がるうえにヘルシー。フライドポテトの油もEVOOにすると最高です。もしかしたらこれがパタタス・ブラバスの本当のコツかもしれません。

★おすすめEVOO:パゴ・デ・バルデクエバス エクストラ・バージン・オリーブオイル
カスティーリャ・イ・レオンで見つけたオリーブオイル。「揚げ物に使う勇気がない・・・」という方も、できればブラバソースにはたっぷり使ってみてください。上質のエクストラ・バージン・オリーブオイルは調味料と同じなので、いつものトマトソースの味が格段に変わりますよ!本場では日本人が炒め物に使う5倍くらいの量をドバっと入れるので最初は驚きましたが、今では私もそうしています。

★赤ワインならこちらもCheck!パゴ・カサ・グラン エレガント

ワイン街道のレストラン「エル・パパ」

カタルーニャ地方でワイナリー巡りをするなら立ち寄って欲しいレストラン「エル・パパ」。初めて来たのにどこか懐かしさを感じるこの佇まい。扉を開いて一歩足を踏み入れれば、使い込まれた家具や食器から長く地元の人々に愛されてきたことが分かります。

エル・パパ(お父さん)が誰かというと、1970年代に魚介料理店としてこの店をオープンしたフアンのことだそう。やがて子供や孫たちに受け継がれて、旬の食材を活かした季節ごとの郷土料理と定番のお米料理(カタルーニャ風魚介のパエリア)、スープ、ジビエを提供しています。「お客さんが友だちになる」と彼らが口を揃えて言うように、家に帰ったみたいにほっこりと気取らない絶品料理が楽しめる空間(その上安い!)。ただし・・・、うっかりすると最後に出てくるパエリアに辿り着くまでに、次から次へと魚介料理が出てくるので、大食漢でない限り十分に注意しましょう。

いや、そんなことは織り込み済みでここに宿泊するというのもありです。エル・パパではカタルーニャ風の美しく広々としたお部屋が訪問者を待っています。ワイン産地らしくスイートルームには、シャルドネ、シャレロ*、メルロー、モナストレル、ガルナッチャ、マカベオ*、ムスカ、パレリャダ*とブドウ品種の名前がついるのがまたうれしいところ。ワインラバーとしてはやっぱりカバ品種*のお部屋に泊まりたい。他にもラベンダー(espigol)やローゼル(Rosella)といった、この地方でよく見られる地中海の植物の名前が付いた部屋もあり、中はもちろんそれにちなんだ素敵な配色になっています。

RESTAURANTE EL PAPÀ Y HOTEL RURAL EL MOLÍ DE PONTONS
 Tel: +34 93 898 70 53 (携帯 +34 676 480 077)
 Email: molirural@hotmail.es
 住所: Carretera de Santes Creus 4 08738, Pontons

カタルーニャの職人が造る自然派カバ

Orio Rosal

生産者:オリオ・ロサル
生産国・産地:スペインカタルーニャ地方

17世紀の瀟洒なエステイトをぐるりと囲むように広がる自社畑では、完全有機栽培が実践されていて周囲に農薬をまき散らす隣人もいない。朝日が昇る前の涼しい時間に収穫されたブドウは、そのまま目の前のセラーに持ち込まれてすぐに圧搾されてワインになり、ワインができたら瓶詰めして酵母とショ糖を添加したらあとは瓶内二次発酵できれいな泡ができるまで地下深くのセラーで時を過ごす。ワインにはモストフロール(モストの花)と呼ばれる第一搾汁だけを使い、ルミュアージュ(動瓶*)の工程は今でもすべて専門の職人により手作業で行われている。それなのに・・・安い。

ワイン名:ダミア カバ ブルット
味のタイプ:白・辛口
ブドウ品種:シャレロ、マカベオ、パレリャダ

ワイン名:ダミア カバ ブルット ロゼ
味のタイプ:ロゼ・辛口
ブドウ品種:ガルナッチャ、ピノ・ノワール

Damia Cava Brut
Damia Cava Brut Rose

★動画:ルミアージュ(動瓶)の様子

ピカピカ

写真はワイナリーでいただいたピカピカ。ちょっと小腹を満たすときの軽食をカタルーニャではこう呼びます。軽食とはいえ豪華ですね!カタルーニャの朝ごはんもほとんどこんな感じで週末のブランチにはカバも楽しみます。ダミアのカバは(特にロゼ)食後のデザートにもよく合いますよ。こちらでスイーツとの楽しみ方もご紹介しています。Check it out !ジプシーの腕はいろんな味

パスタのパエリア、フィデウア

フィデウア / Fideua

お料理上手なボデアガス・アスル・イ・ガランサの醸造家、ダニーさんのレシピです。パスタで作るパエリア、「フィデウア(Fideua)」は、カタルーニャ語でパスタ料理のこと。主にカタルーニャ地方の沿岸地域で人気の料理で、バーベキューのようにアウトドアで楽しまれることもよくあります。お米を忘れた漁師が船の上で作ったのがはじまりとか。スペインにはフィデウア専用のフィデオというパスタがありますが、日本では手に入り難いので、カッペリーニで代用しても大丈夫。炊き上がったらサルサ・アリオリをかけてお楽しみください!これがあるのと無いのとでは大違いです。

材料(10人分):
 魚介のアラ・・・2kg(頭、骨、カニなど出汁を取るため)
 人参・・・3個
 玉ねぎ・・・3個
 塩
 フィデオ・・・3kg
 イカ・・・2kg
 エビ・・・1kg
 アサリ・・・500g
 にんにく
 オリーヴオイル

1  材料を切り35分間茹でてスープストックを作る。
2  大きなフライパンにオリーヴイルを熱し、海老を焼いて取り出す。
3  次に同じフライパンで小口に切ったイカを炒め、にんにくのスライスを入れる。
4  フィデオを黄金色になるまで揚げ焼きにする。
5  スープストックを足して水分がほどよくなくなるまで煮る。
6  お皿に取り分け、アリオリ・ソースを乗せて出来上がり。

サルサ・アリオリ / Salsa Alioli

すべての材料をブレンダーで攪拌してマヨネーズのようになったら完成です。

卵・・・2個
ひまわり油・・・500ml
にんにく

タラのサルサヴェルデ

白ワインに良く合うスペインでも人気のバスク料理。とっても簡単です!

タラのサルサベルデ/Bacalao en salsa verde con almejas

材料(2人分):

 タラの切り身:2枚(一切れ150g程度)
 アサリ:10個
 ニンニク:1片
 小麦粉:小さじ1
 白ワイン:小さめのグラス1/2杯
 水:グラス1杯
 オリーヴオイル
 塩、パセリ

作り方

1)刻んだニンニクをオリーブオイルで炒め、きつね色になったらアサリと小麦粉を入れる。

2)タラに塩を振り、別のフライパンで身から先に焼く。

3)白ワインを注ぎ、刻んだパセリと水を注ぎ約5分間煮る。最後にあさりのソースを合わせて、刻んだパセリを入れ勢いよくソースと絡ませる。

この爽やかさ、まるで大西洋の風!

グラスから溢れるハーブや柑橘の香り、カランカランとグラスに触れる涼やかな氷の音。今や世界的に人気が過熱するアルバリーニョだが、そのアルバリーニョ(それも極上の)をベースワインにしたベルムットが“食事に合うテロワール系ベルムット”、エントロイドだ。

「世の中に品質を追求したベルムットがほとんどない。それなら自分たちで作ってしまおう!」。ベルムットが大好きなアデガス・バルミニョールが、そう考えて4年の歳月をかけて地元ガリシア産のハーブを厳選し、ベースワインにこだわって本気も本気で取り組んだ。だから美味しい。週末にのんびりと一杯。ランチやディナーの前に仲間とわいわい話しながらまた一杯。リフレッシュのマストアイテムとして傍においてはどうだろう?

【ベルモット/ベルムット】白ワインに香草やスパイスを漬け込み酒精強化したフレーバードワイン、ベルモット。スペインではベルムットやベルムーという名前で親しまれてします。ニガヨモギを使うことが必須で、この名称はドイツ語のwermut(ニガヨモギ)に由来していると言われています。ハーブ系のお酒は食欲をたまらなく刺激する独特の心地よい苦みがあり、そのため本来は食前酒として楽しまれてきました。一時は下火になりましたが、スペインでは2015年頃から若者の間でベルムット人気が再燃しています。

エントロイド ブランコ/Entroido Blanco: Albarino 100% plus fresh herbs from Galicia

エントロイド ブランコ(白):厳選した22種類のハーブが漬け込まれたブランコには、アカキナなどガリシア地方に生育しないもの以外はすべて地元産を使用。意外に控えめなトップノーズにはシトラスやフェンネル、月桂樹の香りが隠れ、のど越しにぎゅっと凝縮した美味しさが流れ込む。これがベルムット?と思うだろう。そう、それが造り手のコンセプトだ。

★良く合う食材:ドライフルーツ、ムール貝、ツナ、サーモン、ナチュラルチーズなど。

凝縮感のあるブランコなら高品質の白ワインさながらに、前菜からメインディッシュまで食事を通して楽しめます。メインは魚、鶏など白身のお肉、またはお肉や野菜のパイなど。野菜の素揚げや天婦羅などもよく合います。

★22種類のハーブたち:赤キナ樹皮抽出物、ホップ、ローズマリー、ニガヨモギ、ジュニパー、ショウガ、ペパーミント、ノコギリソウ、セイヨウトウキの根、バニラ、カルダモン、レモン、フェンネル、月桂樹、バラ、シナモン、ユーカリ、ルバーブ、コリアンダー、オレンジ、カモミール

エントロイド ロホ/Entroido Rojo: Albarino 100% plus fresh herbs from Galicia

エントロイド ロホ(赤):ブランコと同じ製法で造られてるロホ。違いは色合いとハーブの種類。ベースの白ワイン(アルバリーニョ)に色素で着色しているのだが心配ご無用。すべて本物にこだわるから自社畑の黒ブドウの果皮から色素を抽出するという手間暇をかけている。ハーブは12種類*とブランコより少ないが、香りは圧倒的。トップノーズに開く柑橘系の香りは苦味を伴いまるでグレープフルーツのような爽やかさを感じながら、バニラを想わせるふくよかなニュアンスがじわじわと広がっていく。ああ、もう虜!

★良く合う食材:アンチョビ、イカの墨、タコ、甘いデザートなど。

ロホは少しカジュアルダウンして気さくなおつまみもお勧め。生ハム、チーズ、トルティージャ(卵とジャガイモのスペインのオムレツ)、コロッケ、ボケロネス(小魚の酢漬け)などのタパスや、日本の居酒屋メニューみたいなものが簡単でお勧め。焼き鳥とエントロイドなんて想像しただけで至福です。

12種類のハーブたち:赤キナ樹皮抽出物、ホップ、ローズマリー、ニガヨモギ、ジュニパー、ショウガ、ペパーミント、ノコギリソウ、セイヨウトウキの根、バニラ、カルダモン、レモン

★動画:生産者さんの解説が視聴できます→エントロイド ブランコエントロイド ロホ

美味しさの源は大西洋のはじける笑顔

Adegas Valmiñor

生産者:アデガス・バルミニョール
生産国・産地:スペイン、リアス・バイシャスD.O.

スペイン人は誠実でありガリシア人はそれ以上。D.O.リアス・バイシャスに今や数軒残るのみとなった生粋のガリシア人によるワイナリー、アデガス・バルミニョールは、1997年に創設者のカルロスが一代で築いたワイナリー。カルロスを中心にスタッフがまるで家族のように仲が良く、訪問者を友人のように迎えてくれる。

バルミニョールというワイナリー名は、カルロスが住む渓谷から取ったもの。実はこの渓谷、コロンブスがアメリカ大陸から帰国した際に3隻の船が着いたという歴史スポットでもある。産地の最南端(リアス・バイシャスに5つのサブゾーンがある)、ミーニョ―川を挟んでポルトガルと国境を接するオ・ロサルにあり、この辺りは河口から広がる大西洋とほとんど水平のようなスペインでは珍しい標高の低さが特徴だ(リアス・バイシャスという産地名は低いリアス式海岸という意味)。

大西洋の冷涼な風を受けて、4つの区画に分かれた34ヘクタールの畑からアルバリーニョ種を中心に国際的には幻のソウソン、ブランセリャオ、カイニョ・ティント、カスタニャルといった地元の“文化財”の栽培にも熱心なのだが、とにかくどれ飲んでも美味しい。それに樽発酵・樽熟成のアルバリーニョやベルムット(極上のアルバリーニョがベースワイン!)のような変わり種を造ったって、彼らが造るならちゃんと理由があり、それは絶対に美味しいということは飲む前から分かっている。知識、献身、情熱、そして愛情がワインを生み出す原動力となっていることは、ここで働く人々の笑顔にちゃんと書いてある。

Vineyard site: Catuxa
Vineyard site:  Figueiró 

★動画: Short Tour

★かもめの本棚『ワインと旅するスペイン』:連載第6回スペインの異世界ガリシア(下)

柔らかくも濃厚。砂漠の花の超絶バランス

生産者:ボデガス・アスル・イ・ガランサ
ワイン名:デシエルト
味のタイプ:赤・フルボディ
ブドウ品種:カベルネ・ソーヴィニョン
生産国・産地:スペイン・ナバーラD.O.

デシエルト/Desierto: Canernet Sauvignon 100%

普通、ワイナリーの最上級ワインといえば玄人受けはすれど、初心者を喜ばせることは滅多にない。味わうには飲み手にもそれなりのレベルが求められるからだ。ところがこの「デシエルト」という赤ワインは不思議とどんな人もギュっと包み込み、虜にしてしまう大らかさがある。その一端は、しっかりと完熟して円やかになったタンニンにあるだろう。赤ワインの渋味が苦手という難関は、すでに解決されているのだ。あとはこの類まれなる凝縮感を味わうのみ。

このワインの造り手「アスル・イ・ガランサ」は、自然への敬意で結ばれた3人の若者が20代の頃に理想のワイン造りを求めて立ち上げたワイナリーだ。そこは量産には向かない常識外れの不毛地帯、スペイン北東部ナバーラにあるヨーロッパ最大の砂漠、ラス・バルデナレス・レアレス近郊。

砂漠から1キロしか離れていないわずか2ヘクタールの単一畑「デシエルト(砂漠)」は、カベルネ・ソーヴィニョンが栽培されている。何を栽培しても凝縮感が圧倒的だったというこの区画に、最も適合したブドウがカベルネだったのだ。厳しい気候の下で、ブドウの房は指でつまむほど小くなり、年間生産量は3000本足らずととても限定的。

ガトーショコラとも至福のペアリング

イカ墨のリゾットやガトーショコラなど、ワインが難しい食べものにもマッチする。いや、ここはシンプルに、大ぶりのグラスに入れて1時間後、3時間後、5時間後と開いていく味わいの変化を楽しむのもよし。

★かもめの本棚『ワインと旅するスペイン』:連載第1回目ナバーラの砂漠がわたしにくれたもの

地中海の宝石マジョルカ島の自然派がこんなにきれい

4 kilos Vinicola

Francesc Grimalt and Sergio Caballero(right)

生産者:クワトロキロス ビニコラ
生産国・産地:スペイン・マジョルカ島


一人は最優秀醸造家賞受賞の醸造家(左)、もう一人はその道では名を馳せるミュージシャンで、コンビの出会いは行きつけのワインバー。ブドウ栽培者のガレージを借りて、牛乳の冷却装置を活用しながら最初のワインを仕込んだのが2006年。島でしっかりとブドウ栽培に取り組む栽培家たちと手を組んで、(この栽培家たち一人一人がまたとても個性的だ)、今も飲んでちゃんと美味しいアートなワインを造り続けている。

クワトロキロスを初めて飲んだのは2008年のバルセロナ。ドツ・ボルツというワインで、カイエット、フォゴノウというマジョルカ島の地ブドウが主体になっている。赤ワインはフルボディでも力で押してこないタイプが好き。これはド・ス・ト・ラ・イ・ク!濃くてもスルスル飲めるって本当に良いワインだと思う。そんな体験を飲み手に期待して、フランセスクとセルヒオはドツ・ボルツ、12ボルトの衝撃を浴びてくれ、とネーミングした。地ブドウ主体のワインなのにどこか帰国子女の香りがするのは、フランス品種が少しづつブレンドされているからだろう。ナチュラルワインもギリギリのものから、ちゃんとしたものまで幅広いけど、このセンスには感心してしまう。


小さなワイナリーなのにコンパクトにまとまったラインナップの広さが面白い。亜硫酸無添加のモトール、マジョルカ島の伝説の協同組合へのオマージュである島スタイルのアイランド・シンジケイト(これが絶妙に薄旨系)、一転、モダンな醸造法で地ブドウを醸したクワトロキロス、圧巻はカイエット種の女性らしさを余すところなく引き出した樽醗酵樽熟成のトップキュヴェ、年間生産量たったの700本のグリマルト・カバジェーロだ。

#わくわくするようなストーリー