雪降るギリシャの情熱

2周回ってイタリア、食の都の赤い泡

Medici Ermete

生産者:メディチ・エルメーテ
生産国:イタリア/エミリア・ロマーニャ州

シャンパーニュに代表されるスパークリングワインといえば白やロゼが有名ですが、赤い泡があることをご存じでしょうか。

イタリア中部のエミリア・ロマーニャ州で造られる「ランブルスコ」がそれ。愛らしい赤果実の風味と渋みの少なさでビギナーでも安心の美味しさというだけでなく、美食の国イタリアでも「食の都」として名高いエミリア・ロマーニャ州のワインだけあって食事との相性が抜群。イタリア料理といわれて連想するパルマハムやパルミジャーノ・レッジャーノチーズ、ボロネーゼソースはどれもエミリア・ロマーニャ州が発祥ですが、そんなイタリア食材はもちろんのこと、幅広い料理とよく合うので使いやすさも抜群です。さらに普通のワインより少しアルコールが低いので、スルスルと飲めてしまうという始末。

そんな愛すべきランブルスコの完成度を極限まで高めたのが、かのメディチ家の末裔が経営するワイナリー「メディチ・エルメーテ」です。ランブルスコで初めて大量生産ではなく、単一畑でのブドウ栽培を取り入れて品質を磨いた結果、カジュアルなワインが永遠の輝きを持つことになりました。気さくなのに超一流というところがたまりません。

The owner and 4th generation, Alberto Medici

ピノ・ノワール・プレコスと小鳥のおはなし

Photo by Vicente van Zalinge

この世界には本当にたくさんのブドウ品種があるもので、ワインバイヤーになって十数年、イギリスのスパークリングワインを買い付けて初めて出会ったブドウ品種がピノ・ノワール・プレコス(Pinot Noir Précoce)です。直訳すると「早熟のピノ・ノワール」という意味になりますが、ピノ・ノワールとは異なるという説もあり、その実態はマイナーゆえにまだ解明されていません。

これについて議論するのが本来私の仕事ですが、それはどなたかに任せるとして、ここでは「ピノ・ノワールとの違いは何ですか?」と造り手さんに尋ねたときの回答から豊かな環境を想像させてくれる素敵なお話をご紹介します。自然に寄り添うのがワイン造り。そんなワイナリーの日常が見えるようで癒されます。

*****

“イングランドでは通常ピノ・ノワールよりもプレコスの方が理想的なレベルまで熟しやすい品種です。完熟を迎えられるので、プレコスからは赤果実のはじけるようなアロマと風味、そして濃く深い赤色が得られます。

しかもプレコスはピノ・ノワールより約3週間早く熟します。イングランドではしばしば秋に雨が降りますが、その前に収穫できるためボトリティス菌のリスクが少ないというメリットもあります。

さらに鳥害のリスクも少ないです。というのも、プレコスが完熟する時期はブドウ以外のたくさんのベリーが実を結ぶため、鳥は他にも食べるものが尽きないのです。” by Hattingley Valley

Harvest in Hattingley Valley

果皮が青いですね。Précoceという呼び名が示すように原産地はフランスですが、ドイツでフリューブルグンダー(Frühburgunder)と呼ばれて赤ワインが生産されています。

カンタブリア山脈に抱かれて

Eguren Ugarte

生産者:エグーレン・ウガルテ
生産国・産地:スペイン、リオハ・アラベサ

長期熟成型の伝統的なリオハの骨格に加えて、惚れ惚れするほどフレッシュな果実味をあわせ持つエグーレン・ウガルテの赤ワイン。ワイナリーの革新性を感じるこの意外なバランスが魅力だが、銘醸ひしめくリオハ・アラベサで2番目に古いワイナリーを読み解けば、「テロワール(ワインを育む気候風土)」の面白さが見えてくる。

まずは北に聳えるカンタブリア山脈とこの山脈を何キロにも渡って覆う分厚い雲の帯。この雲は山の向こうにあるカンタブリア海から吹く、湿気を含んだ冷風によるもの。湿気と冷気はブドウの大敵だが、山にぶつかって雨となり(だから大量の雲が発生)、山を越える頃には爽やかな風となってブドウ畑を吹き抜ける。このとき、畑のカビや病害虫が一掃されるのだ。

畑はすべて南向き。冷涼なリオハ・アラベサでも日照量が確保されてブドウはきちんと完熟し、近くを流れるエブロ川のおかげで乾燥地帯にも関わらず適度な湿度が保たれる、という感じ。何もかもが自然の摂理に沿っていて、人の知恵の偉大さに胸がジーンと熱くなる。

さて、この見事なワイナリーを築いたのは、2023年に御年89歳で惜しまれつつ亡くなった先代ビトリーノ・エグーレン(写真左)。ビトリーノは美味しいワインを飲んでもらうだけでなく、ブドウ畑や樽に囲まれて眠る素晴らしさを多くの人に味わってもらいと願った。だから30年以上を費やしてコツコツと洞窟探検さながらのセラーやレストランを作り、まだワイナリー訪問が一般的ではなかった時代に「エノツーリズム」として人々に開放した。

情熱と愛情に満ちた驚きのストーリーは、こちらで詳しくご紹介しています。

★東海教育研究所・かもめの本棚『ワインと旅するスペイン』:星の巡礼カミーノ・デ・サンティアゴをゆく前編
★動画:『ビトリーノ・エグーレンが語る』(人生に悩んだときにも見てみたい)

***

<エグーレン・ウガルテに泊まる
| Hotel | Enoturisumo y Eventos |
滞在し、ブドウ畑を歩き、ワインを試飲して、レストランで食事をし(何か所もある!)、一息つきたくなったらテラスでワイングラスを片手にのんびりと。最高の休暇が待っている。

チャレンジの結果が偉大

Weingut Malat

生産者:ヴァイングート・マラート
生産国:オーストリア/クレムスタール

無数の小部屋で区切られた古いセラーを歩く時、突き当りまで行くと入口に戻って来たことに気付く。最も古い記録で18世紀に遡るヴァイングート・マラートは、数百年という時間をかけて少しづつ、だが着実に進化を遂げて来た。「これまでの世代の人々が経験を蓄積してきたのです」と9代目の現当主ミヒャエル・マラートは言う。「ここをご覧いただけば、新しく造作された空間が時間をかけてこの場に馴染んできたことが分かるでしょう」。見渡す限りがファミリーヒストリー。セラーにはこれまでの軌跡とこれから進む道が示されている。

「ヴァッハウのシリアスさとカンプタールの親しみやすさを併せ持つ」と評されるクレムスタール。ワイナリーの多くがドナウ川北岸にあるのとは対照的に、マラート家はドナウ川南岸にあるシュティフト・グートヴァイグ修道院の丘陵地帯というベストポジションに拠点を置き、隣接する銘醸ヴァッハウ地域にも畑を所有し、多様な土壌の畑と数々の銘醸畑からユニークなワインを生み出している。

東からパノニア平原の熱風を受け、西のアルプスから吹き降ろす冷風によって絶妙な寒暖差が生まれるから、溌溂とした酸やフレッシュさを保ちながら芳醇なアロマを開くことができる。だからだろうか。グリューナー・ヴェルトリーナーやリースリングのずば抜けたクオリティに加えて、ブルゴーニュの風格を湛えるピノ・ノワールやカベルネ・ソーヴィニョンによる赤ワインも注目だ。1970年代という早い段階で発表されたこれらの赤ワインは、即座に世界的な評価を獲得したというから驚き。

Sekt Rose Brut Methode Traditional
生産者:ヴァイングート・マラート
ワイン名:ゼクト ロゼ ブリュット メトド・トラティシオナル
ブドウ品種:ピノ・ノワール
生産国・産地:オーストリア・クレムスタール

オーストリアきってのピノ・ノワールの名手マラートが得意とするピノ・ノワール100%のゼクト(シャンパーニュと同じ伝統製法で造る高級スパークリングワイン)。
ロゼにしては淡い色合いに驚かれるかも知れません。ですがまるで花が咲き誇る庭園を歩いているかのように、花の蜜、イチゴ、バラの花びらの香りが広がり、ピノ・ノワールらしいしっかりとした骨格を果実味が包み込むこの上質感。泡立ちが繊細でクリーミーなことは言うまでもなく、生き生きと弾けて爽快。これこそ良いスパークリングワインとしみじみ感動が広がります。

Pinot Noir Classic
生産者:ヴァイングート・マラート
ワイン名:ピノ・ノワール クラシック
ブドウ品種:ピノ・ノワール
生産国・産地:オーストリア・クレムスタール

滑らかで香り高いピノ・ノワール。柔らかく深みのあるラズベリーの風味がほのかに感じるスパイスに縁取られ、エレガントかつジューシー。仔牛のローストや熟成チーズ、トマトソースのパスタ・・・。考えただけでも幸せになる本当に良いワイン。

Pinot Noir Ried Satzen
生産者:ヴァイングート・マラート
ワイン名:ピノ・ノワール リート・サッツセン
ブドウ品種:ピノ・ノワール
生産国・産地:オーストリア・クレムスタール 

15世紀の古文書にも「この区画は特に素晴らしくブドウ栽培に適している」と記録される単一畑もの、リート・サッツセンが漂わせるブルゴーニュさながらの風格。表土を覆う腐葉土がブドウの樹に栄養を与え、長い年月をかけてドナウ川に堆積した石英と石灰層が繊細なミネラル感を与えています。ちなみにこの単一畑ではオーストリアのピノ・ノワールといわれる地ブドウ、サンクト・ラウレントも栽培しており、これがまた絶品。

★Malat Weingut unt Hotelでは、ブドウ畑に囲まれてワインツーリズムが楽しめます。

Kinmon Akita Sake Brewery 米の旨みを磨き抜く

Producer: Kinmon Akita Shuzo|金紋秋田酒造
Country/Region: Japan/Akita|日本/秋田県

A NEW CONCEPT: CHALLENGING THE NORMS
Brewed by a modest, local sake brewery whose maxim is “good sake ages well”, X3 AMAIRO was conceived from the principle of “sake food pairing”.
In addition to the adoption of several approaches from the wine industry, such as blending or modern brewing methods, this procedure allows the brewery to create a vast range of unique sake products, totally new both in style and technique. Selective older vintage blends, for instance, provide good examples that validate this doctrine.

RICH IN AMINO ACID
What is unique in “x3 AMAIRO” is the use of Kouji – a rice-malt which is a nationally specially designated fungus in Japan. The proportion of Kouji within “x3 AMAIRO” is three times more than normal – a consequence of which is the production of more amino acid, giving the beverage a value of 2.3.

MIRIN, COOKING SAKE, BY THE WAY
The “fish dish” is as much emblematic of Japanese gastronomy as are Sushi and Sashimi.
The fifth key taste profile, known as Umami (sweet, sour, salt and bitter being the first four) holds an important place in Japanese gastronomy.
The Umami taste is experienced in the variety of Japanese fermented foods such as soy sauce or the fish broth named dashi. This subtle flavour is additionally enhanced by Mirin, itself an essential condiment and very common in many dishes, which is succinctly described as a type of sweet “cooking sake”
A small amount of Mirin is used to either add a bright touch to grilled or boiled fish, to reduce the smell of fish or to help ingredients more readily absorb the Umami flavour.
Due to its high alcohol content and abundance of amylose – which comes from glutinous rice – the savoury balance is rather unsuitable for contemporary drinking although Mirin once had a place akin to Port wine during the Edo period (17th-18th centuries).

KINMON AKITA SAKE BREWERY, “x3 AMAIRO” (photo left)
“x3 AMAIRO” was created to occupy the same role as Mirin yet it is pleasantly smooth on the palate – much like an authentic Junmai-shu – a pure-rice sake made from only rice and water without any distilled alcohol.

When paired with certain foods, that are otherwise usually incompatible with wine – sea urchin or oyster, for instance, the discerning taster will be impressed by “x3 AMAIRO”, especially in how well it brings out the sublime creamy Umami flavour from the sea-urchin and enhancing the taste experience of both the food and the beverage.

A real “food friendly” sake indeed. Whether with a sharp-flavoured blue cheese or to accompany fatty Chinese foods such as braised pork, compatibility is assured.

There is nothing quite like “x3 AMAIRO” but if one had to pick a wine to replace it, Sherry Amontillado from Jerez or the sweet Sauternes are the only candidates.

  • BRAND: x3 AMAIRO
  • BREWERY: Kinmon Akita Sake Brewery
  • RICE: Akita Prefecture Origin MENKOINA
  • AlLCOHOL: 15%
  • RICE POLISHING RATE: 65%
  • SAKE METER VALUE: -24
  • ACIDITY: 2.5
  • AMINO ACIDO: 2.3
  • YEAST: Sake yeast kyokai No.7
  • DRINKING TEMPERATURE: 10-25 degree

この日本酒は、「ワインの様に新しい造り方やブレンドを積極的に実践しないのか?」という独自の考えを持ち、「ペアリング」としての日本酒をコンセプトに酒造りを行う蔵元が醸すお酒です。その為、現代では珍しく積極的に新しい技法での製造や古酒ブレンド商品を開発しています。今回ご紹介するこの商品は、酒の仕込み段階での麹の使用を通常の酒の3倍にしたことで、アミノ酸の生成が活発になり、お酒のアミノ酸値が2.3と非常に高いお酒です。

日本食といえば寿司やお造りに代表される「魚」を食べる文化。
そして、醤油などの発酵食品や出汁に代表される「旨み」を大切にする文化があります。その料理の旨みの引き立て役として、日本で重宝されているのが「みりん」です。みりんには、魚の生臭さを抑えて味(旨み)を浸透させる効果があり、煮魚や魚の「たれ」に調理用として使用されています。

みりんはもち米由来の糖度(アミロース)が高い為、そして、アルコール添加をするため、そのまま飲用するには香味のバランスが悪く、基本的に現代では飲用しません。
※江戸時代にはみりんに焼酎を足しアルコール添加した酒を「柳影」といい、高級な食中酒として食通の間で重宝されていました

そこで、「みりん」のような役割を果たしながらも、醸造アルコールの添加がない純米酒のやわらかな飲み心地、そして酒としても楽しめる新しい可能性を見出したのがこちらの商品。特に旨みが強く、ワインとの相性が難しい「ウニ」や「牡蠣」などのクリーミーな旨味を引き上げる非常に素晴らしいフードフレンドリーなお酒。その他、和食以外でも旨みの強いチーズ、特に「ブルーチーズ」や脂質の多い中華、特に「豚の角煮」など、食事の旨みをとても引き立てる興味深いアイテムでもあります。日本酒界のソーテルヌやアモンティリャードのような立ち位置といえるでしょう。

カタルーニャの職人が造る自然派カバ

Orio Rosal

生産者:オリオ・ロサル
生産国・産地:スペインカタルーニャ地方

17世紀の瀟洒なエステイトをぐるりと囲むように広がる自社畑では、完全有機栽培が実践されていて周囲に農薬をまき散らす隣人もいない。朝日が昇る前の涼しい時間に収穫されたブドウは、そのまま目の前のセラーに持ち込まれてすぐに圧搾されてワインになり、ワインができたら瓶詰めして酵母とショ糖を添加したらあとは瓶内二次発酵できれいな泡ができるまで地下深くのセラーで時を過ごす。ワインにはモストフロール(モストの花)と呼ばれる第一搾汁だけを使い、ルミュアージュ(動瓶*)の工程は今でもすべて専門の職人により手作業で行われている。それなのに・・・安い。

ワイン名:ダミア カバ ブルット
味のタイプ:白・辛口
ブドウ品種:シャレロ、マカベオ、パレリャダ

ワイン名:ダミア カバ ブルット ロゼ
味のタイプ:ロゼ・辛口
ブドウ品種:ガルナッチャ、ピノ・ノワール

Damia Cava Brut
Damia Cava Brut Rose

★動画:ルミアージュ(動瓶)の様子

ピカピカ

写真はワイナリーでいただいたピカピカ。ちょっと小腹を満たすときの軽食をカタルーニャではこう呼びます。軽食とはいえ豪華ですね!カタルーニャの朝ごはんもほとんどこんな感じで週末のブランチにはカバも楽しみます。ダミアのカバは(特にロゼ)食後のデザートにもよく合いますよ。こちらでスイーツとの楽しみ方もご紹介しています。Check it out !ジプシーの腕はいろんな味

地下12メートルで泡に専念ならもう安心

La Maison Louis de Grenelle

生産者:ルイ・ド・グルネル
生産国・産地:フランス・ロワール地方ソミュール

スパークリングワイン造りは高度なテクニックが要求されるから、泡専門と聞けば最初のハードルはまずクリア。北フランス・ロワール地方ソミュールのルイ・ド・グルネルは、1859年に設立された今なお続く数少ない家族経営のワイナリーで、設立以来、ずっと真摯にクレマン(シャンパーニュと同じ伝統製法によるスパークリングワイン)に向き合っている。

圧巻は設立当時にトゥファ(石灰華)層を削り出して造られたクレマン専用のセラーと、15世紀の採石場跡を利用した地下12メートルにあるカーヴ。冷たい空気と静けさに満ちた空間で人の手により丁寧に育まれ、そして眠りについた極上の泡。そんなシーンを思い浮かべて飲むと美味しさもひとしお。

Louis de Grenelle Saumur Grande Cuvée Brut NV
祝祭の始まりを告げる美しいゴールドラベルのグラン・キュヴェは、5つあるクレマンコレクションのなかでも、「Collection Raffinement(洗練)」にカテゴライズされる上級品。24か月と規定より長い熟成を経てまとうカラメル漬けした桃やマルメロのような果実感や、ヘーゼルナッツやアーモンドの風味にアカシア蜂蜜のニュアンスにブリオッシュ香の漂う豊かな味わい。前菜だけでなく、フォアグラやバターを効かせた魚のグリルなどメインデッシュにも合わせて楽しみたい。シャンパーニュでは大げさで、でもクラス感のある泡が欲しいシーンに最適。

美味しさの源は大西洋のはじける笑顔

Adegas Valmiñor

生産者:アデガス・バルミニョール
生産国・産地:スペイン、リアス・バイシャスD.O.

スペイン人は誠実でありガリシア人はそれ以上。D.O.リアス・バイシャスに今や数軒残るのみとなった生粋のガリシア人によるワイナリー、アデガス・バルミニョールは、1997年に創設者のカルロスが一代で築いたワイナリー。カルロスを中心にスタッフがまるで家族のように仲が良く、訪問者を友人のように迎えてくれる。

バルミニョールというワイナリー名は、カルロスが住む渓谷から取ったもの。実はこの渓谷、コロンブスがアメリカ大陸から帰国した際に3隻の船が着いたという歴史スポットでもある。産地の最南端(リアス・バイシャスに5つのサブゾーンがある)、ミーニョ―川を挟んでポルトガルと国境を接するオ・ロサルにあり、この辺りは河口から広がる大西洋とほとんど水平のようなスペインでは珍しい標高の低さが特徴だ(リアス・バイシャスという産地名は低いリアス式海岸という意味)。

大西洋の冷涼な風を受けて、4つの区画に分かれた34ヘクタールの畑からアルバリーニョ種を中心に国際的には幻のソウソン、ブランセリャオ、カイニョ・ティント、カスタニャルといった地元の“文化財”の栽培にも熱心なのだが、とにかくどれ飲んでも美味しい。それに樽発酵・樽熟成のアルバリーニョやベルムット(極上のアルバリーニョがベースワイン!)のような変わり種を造ったって、彼らが造るならちゃんと理由があり、それは絶対に美味しいということは飲む前から分かっている。知識、献身、情熱、そして愛情がワインを生み出す原動力となっていることは、ここで働く人々の笑顔にちゃんと書いてある。

Vineyard site: Catuxa
Vineyard site:  Figueiró 

★動画: Short Tour

★かもめの本棚『ワインと旅するスペイン』:連載第6回スペインの異世界ガリシア(下)

自然派の造り手、フアシェを飲んで泣く

Domaine Fouassier

Benoit (right) and Fouassier family

生産者:ドメーヌ・フアシェ
生産国・産地:フランス・ロワール地方サンセール

初めて飲んだ時、一口で「これだ・・・!」と衝撃を受けた透明感。フアシェに出会えてサンセールの旅が終わったと思うくらい、心底魅了されている。


3種類あるサンセールはそれぞれにはっきりとした個性があるが、醸造方法は全く同じ、違うのは土壌だけ、という代物。テロワールワインは数多あれど、こういう取り組みをしてくれるとワインラバーとしては本当に痛快。テロワールがなにか知りたかったら難しい説明はいらない。フアシェを飲めばいいのだから。だから3種類、全部、できれば並べて飲む価値がある。わずか100~300メートルしか離れていない区画の違いを映し出せる造り手は飲む価値がある。


サンセールがソーヴィニヨン・ブランの産地になったのは19世紀のフィロキセラ禍以降。畑を馬で耕作していた当時、斜面の仕事は重労働で、被害を機に耕作転換が進んだ。そんなとき、進んで近隣の栽培家から畑の買い取りに応じていたのがフアシェ家だ。だから、今ではサンセール村のほとんどすべての優良区画を持っている。


きっちりと完熟したサンセールのソーヴィニヨン・ブランにはグリーンでハービシャスなアロマがない。サンセールの土壌はソーヴィニヨン・ブランに宿るミネラル感の現れ方で世界の産地と一線を画すと言われ、だからこそフアシェは区画ごとに土壌を分けてテロワールワインへと邁進した。
SO2をほとんど使わないと聞くとちょっと身構えてしまうが、こんなに果実味がきれいで安定感があるのには驚いてしまう。
現在の当主、ブノワ・フアシェはフランス人なのにバカンスを取ることがほとんどない。畑の手入れがしたいし、畑にいることが本当に幸せなんだと言う。

#わくわくするようなストーリー