日本でも定着しつつあるアフタヌーンティー。ホテルのフェアでも取り上げられることが多くなり、桜やハロウィンなど季節感を取り入れたものや和風のアレンジが利いていて華やかですが、私が胸躍るのはスコーンと紅茶、シャンパーニュのシンプルなアフタヌーンティー。例えばイギリスの新進気鋭のワイナリー、ディグビー・ファイン・イングリッシュ(Digby Fine English)が素敵です。
「さあ、テイスティングしよう」と招かれたのはご自宅。玄関の扉を開けると、焼きたてのスコーンの香りがします。ダイニングルームはシックにコーディネートされていて、上質のテーブルクロスがかかったテーブルには、手作りのスコーンにチップトゥリーのブルーベリージャム(日本でも手軽に買える英国王室御用達アイテム)、いつも決まったお店で買うというクロテッドクリームと、彼らの造る最高の英国産スパークリングワインが並んでいます。大人の上質。やっぱりイギリス人は素敵だなと見惚れていると、「そうだ。お花を飾らないとね」とウィンクして、壁の色と同じ黄色のバラを持ってきてくれました。
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歴史的にずっとワインの輸入国だったイギリスが、冷涼な気候を生かして本格的なスパークリングワインを造るようになったのは2000年代に入ってからのこと。最新の設備投資をしてシャンパーニュと同じ伝統製法で向き合った結果、きめ細かいクリーミーな泡と酸が素晴らしいイギリスならではのスパークリングワインになりました。「これまでアフタヌーンティーの最後はシャンパーニュ以外あり得なかったけど、これでやっとすべてを英国産で通すことができるようになったんだ!」とは、昔年の思いが交錯したイギリス人の心からの歓喜の声なのです。
さて、私がイギリスにいた1990年代は、人と会えば「Would you like a cup of tea?(お茶はいかが?)」と聞かれたものでした。日常生活ではマグカップにティーバックという飾らないスタイルがお決まりですが、今ではコーヒー党も増えたイギリスで、おもてなしはアフタヌーンティーという所に文化が表れていて素敵です。美しい公園があちこちにあるイギリスでは、ピクニックにアフタヌーンティーもいいですね。美味しいスコーンと紅茶とスパークリングワインがあれば、他に演出はいりません。