地中海のブドウ栽培家たちが話したら

4 kilos番外編

最優秀醸造家と世界的アーティストという異色のコンビが織りなすマジョルカ島の自然派ワイナリー「クワトロキロス」が、ブドウ畑の主役である栽培家たちの声を映像にまとめました。日本から遠く離れたスペインの美しい島で、どんなことを考えてどんな風にブドウを栽培しているのでしょう?

動画のタイトルは『Vinas, Ovejas y Ovnis ~ブドウ畑、羊と未確認飛行物体』。島の栽培家たちが話す言葉はマジョルキン(マジョルカ語)、かつすごい訛り。

それではどうぞ!★動画:Vinas, Ovejas y Ovnis(制作:4 kilos)

LUNA (月) シモ・アブリル/ブドウ栽培家 (0:00)

ブドウ樹、剪定、植樹、その他すべての畑仕事に月が影響しているのは明らかだ。なぜだって?月の運行に従って剪定をしたら樹液が良く出て、よく成長し、よく根付いたことを実際に確認したからそう断言できる。例えば畑で月の動きや兆候を見ながら植樹した 9000 本のうち、駄目になったのはたった一本だけだった。果実、根、そのほか全てにおいて適切な日を見極めると 9000 本のうち失敗はわずか一本だったんだ。それが何だって? ただのミスだったのか、もともと植樹した時から状態が悪かったのか?9000 本だぞ?少なくないだろう。普通なら失敗率は 2%だ(※約 180 本)。


満月にかけてブドウの樹はより多くの房をつけ、月が欠けていくときはブドウの樹が成長するときだ。だから弱い樹に手はかけない。まずしっかりとした幹を作り、新月に剪定することを心掛けている。別の言い方をすれば、ブドウの樹は新月の時に最も生命力 が弱まる。満月にかけてはよく涙を流す(※樹液がよく滲み出ることの比喩)。だから剪定はできれば月齢が 高くなるとき(※つまり新月に向かうとき)にしたいんだ。新月に向かうときに樹液が下がってくるからだ。月の 影響は、満月に向かうとき樹液は上がりよく涙を流し、新月にかけては樹液が下がりあまり涙を流さない。

天気に変われとお願いはできないが、月の運行に従うことは天気にお願いごとを聞いてもらことと同じだ。そうでなければ天気と闘うことになる。そう、単純なことなのさ。

TERRENO(土壌) トニ・ベルトゥラ/ブドウ栽培家 (2:55)

「Son Roig/ソン・ロイグ」は 25ha の畑で主な土壌はカルベルメル。そこに石と砂利が混ざっている。カルベルメル土壌はより多く石を含んだものとより粘土を多く含んだもの(粘土質土壌の色は黄色から灰色)の2種類に分けられる。ここから下の方はカルベルメルだけの土壌で、石は全く無い。だから畑の性質は全く異なる。石は畑に太陽の熱を通さないからブドウの樹は常にフレッシュで、それがカルベルメル土壌と合わさることで土の中は常に冷んやりしている。「石とこの土壌は日光を通さない」というのがこの畑の特徴だ。


畑では昔のように働くことを心掛けている。今では以前より畑の状態が良くなってきたと実感しているよ。われわれで4代目で、祖父と父親と一緒にこの方法に戻したのさ。前は石灰と硫酸銅を混ぜなければならなかったが(※ボルドー液のこと)、今では畑仕事が楽になり、ワイン造りも楽になった。


もう一度強調させて欲しい。私にとって一番大切なのは土だ。70%は土で決まる。ここ「Son Roig」はブドウ栽培とワイン造りに特権を持つ区画なんだ。

OVEJAS(羊) シャウメ・ソン・ロセジョ/羊飼い(5:07)

わたしたち家族はずっと羊と一緒に暮らしてきた。私は今年で47歳になるが、その間ずっと羊と共にいる。羊たちはカルベルメル土壌(ティエラ・ロハ/赤土)にいるとよく草をはむ。ティエラ・ロハの草はティエラ・ブランカ(白土)より美味しいからだ。それにティエラ・ブランカで草を食べるより、カルベルメルの石を舐めるのが好きだ。カルベルメルの石の方が草より美味しいからだし、もっと広い野原に放っても気が付けばカルベルメル土壌がある場所に集まってくる。

むかし、老人に言われたことがあるよ。「カルベルメルで羊を放牧したらミルクはあまりとれない。とれたとしてもその場でチーズになってしまうぞ」と。ティエラ・ブランカだとミルクはよく採れるがチーズはできない。凄い違いだろう?うちは3ヘクタールの放牧地のうち半分がカルベルメル、残り半分がティエラ・ブランカだ。この辺りでは本当に大きな違いを生むんだ!例えばあっちがティエラ・ブランカ、その小道一つ向こうがティエラ・ロハ(カルベルメル)だ。こんな狭い所でも違いがあるだろう?さあ、一緒に見に行こう。

COBERTURA VEGETAL(植物の覆い) ビエル・ナダル/ブドウ栽培家 (6:40)

冬場のハーブは畑を温めながらもくもくと耕作を続けるものだ。人間が畑を耕す必要はなく、土中の虫たちもまた仕事をしてくれる。春に向かって畑が成長期に入ると雑草は枯れ、天然の肥料になる。夏の畑では競争がない。なぜかというと虫たちが夏眠につくから競争が起きない。夏、ハーブは畑から何も吸収せずに枯れてしまう。こうして畑では何も問題が起こらず健やかでいるんだ。

ある日、藁を敷いた他の人の畑を歩くことがあった。藁で畑の中を涼しくしているんだなと思ったが、ハーブがあればそもそも藁を敷く必要がない。こうした畑仕事をしなくなってもう3年になるが、何も変わったことは起きていない。これが一農民である私が畑で見つけたとても“不可思議”なことだ。私にはこの汚い畑よりもっと整っていて美しい畑を持っている知り合いがたくさんいるが、彼らが私の畑を見ても普通のことが何も見つからないようだ。92歳になる父はこう言う。「この何もしていない畑。まるで昔の畑のようだ」と。

今、私はとても幸せだ。畑に散歩に行き、「ああ!なんて素晴らしいブドウだ!」と思うことができるからだ。素晴らしいブドウがそこにある、これこそが答えだ。以前は「ああ、ベド病だ。畝にベド病が出た」と騒ぎ、「うろたえるな。耐え凌ぐんだ」と自分に言い聞かせていたものだ。こうなるとブドウの葉は検査され、有機栽培で禁止されている物質を使っていないかも検査された。使ってなんかいないのに。

もはや私たちに検査は必要ない。今年に入って、他にも何人か畑仕事をしないことにした栽培家がいる。私の畑がとても健全なのを見て、辞めたのだ。ある日彼らが私にこう言った。「もうシラーはやめたよ。枝が長くなり過ぎるし、成長し過ぎるからね」と。これから少しずつでも、皆がそうするようになるよ。

OVNI(未確認飛行物体) ジョアン・デ・ソン・スアウ/農家(9:12) 

俺は畑で宇宙人を見た~。本当に本当だぜ~って延々と語っています!笑