はじめてこのお菓子を知ったのは、社会人になりたての頃。おおつきちひろさんの『スペインの熱い食卓』というレシピ本でした。料理の名前が気になってページをめくってみると、なんのことはない。ロールケーキのことをスペインではブラソ・デ・ヒターノ、文字通り「ジプシーの腕」と呼ぶのでした。でもやっぱり美味しそう。地域や家庭によって、クリームの代わりにチョコレートソースやジャムを使うなどバリエーションが豊富なのは、日本のロールケーキも同じです。
カバと合わせるのが醍醐味
カタルーニャ地方のワイナリー、オリオ・ロサルで食べたこちらのブラソ・デ・ヒターノは、スポンジよりクリームの量が圧倒的に多くて食感はふんわりとしています。ナイフやフォークで食べる気取ったデザートではないので、カジュアルに楽しみましょう。片手で持ってちょうどよい大きさです。
はちみつのナパージュが艶々と食欲をそそり、口どけの軽いクリームはさっぱりとしています。食後のデザートなのでお茶やコーヒーもよいですが、ここはカタルーニャ。カバだっておすすめです。普通、お菓子に合わせるなら甘口ワインが理想ですが、カバなら辛口でも果実由来の甘みを感じるので、甘すぎないこんなデザートにもとてもよく合います。
ダミア カバ/Damia 1637 Cava
千円ちょっとで買えるのに、完全有機栽培できっちり手摘み収穫。区間ごとに醸造してブレンドし、法定熟成期間より長いレゼルバクラスの熟成を施すダミア ブランド。良いものをできるだけ安く提供して、楽しんでもらいたいと願う生産者の気持ちが込められたワインです。
ブラソ・デ・ヒターノの作り方
<材料>スポンジ台
- 卵・・・・・・・・・ 4個(黄身と白身を分けておく)
- 小麦粉・・・・・・・ 100g
- グラニュー糖・・・・ 100g
- ベイキングパウダー・ 小さじ1
<スポンジ台の作り方>
こちらの動画が分かりやすいです→Como hacer bizcocho para brazo de gitano。焼きあがったら空のオーブン皿で上から抑えておくという小技などに主婦の知恵が詰まっています。解説はスペイン語ですが、普段からお料理をする人なら見るだけでもコツがつかめます。クリームの部分はお好みで。季節のコンフィチュールも最高です。
もとは「エジプト人の腕」だった
ロールケーキは英語でスイスロール/Swiss Rollと呼びますが、どうやらスイスとは関係がありません。スペインには、中世にエジプトを旅したイタリア人修道僧が、現地の修道院で食べたものをもたらしたのが始まりのようです。そんな訳で当初は「エジプト人の腕」と呼ばれていましたが、時とともに「ジプシーの腕」に変わっていきました。
このお菓子は、スペインの旧植民地のラテンアメリカの国々にも広まっています。チリでは「女王の腕」、メキシコでは「子供のおくるみ」、フィリピンでは「メルセデスの腕」などなど、名前のバリエーションも豊かです。今のわたしたちにとってはいたって素朴なお菓子ですが、中世の頃はきっと特別なものだったはずです。Enjoy Brazo de Gitano with your Cava!