カンタブリア山脈に抱かれて

Eguren Ugarte

生産者:エグーレン・ウガルテ
生産国・産地:スペイン、リオハ・アラベサ

長期熟成型の伝統的なリオハの骨格に加えて、惚れ惚れするほどフレッシュな果実味をあわせ持つエグーレン・ウガルテの赤ワイン。ワイナリーの革新性を感じるこの意外なバランスが魅力だが、銘醸ひしめくリオハ・アラベサで2番目に古いワイナリーを読み解けば、「テロワール(ワインを育む気候風土)」の面白さが見えてくる。

まずは北に聳えるカンタブリア山脈とこの山脈を何キロにも渡って覆う分厚い雲の帯。この雲は山の向こうにあるカンタブリア海から吹く、湿気を含んだ冷風によるもの。湿気と冷気はブドウの大敵だが、山にぶつかって雨となり(だから大量の雲が発生)、山を越える頃には爽やかな風となってブドウ畑を吹き抜ける。このとき、畑のカビや病害虫が一掃されるのだ。

畑はすべて南向き。冷涼なリオハ・アラベサでも日照量が確保されてブドウはきちんと完熟し、近くを流れるエブロ川のおかげで乾燥地帯にも関わらず適度な湿度が保たれる、という感じ。何もかもが自然の摂理に沿っていて、人の知恵の偉大さに胸がジーンと熱くなる。

さて、この見事なワイナリーを築いたのは、2023年に御年89歳で惜しまれつつ亡くなった先代ビトリーノ・エグーレン(写真左)。ビトリーノは美味しいワインを飲んでもらうだけでなく、ブドウ畑や樽に囲まれて眠る素晴らしさを多くの人に味わってもらいと願った。だから30年以上を費やしてコツコツと洞窟探検さながらのセラーやレストランを作り、まだワイナリー訪問が一般的ではなかった時代に「エノツーリズム」として人々に開放した。

情熱と愛情に満ちた驚きのストーリーは、こちらで詳しくご紹介しています。

★東海教育研究所・かもめの本棚『ワインと旅するスペイン』:星の巡礼カミーノ・デ・サンティアゴをゆく前編
★動画:『ビトリーノ・エグーレンが語る』(人生に悩んだときにも見てみたい)

***

<エグーレン・ウガルテに泊まる
| Hotel | Enoturisumo y Eventos |
滞在し、ブドウ畑を歩き、ワインを試飲して、レストランで食事をし(何か所もある!)、一息つきたくなったらテラスでワイングラスを片手にのんびりと。最高の休暇が待っている。

Rioja DOCa リオハ

The epitome of fine red Spanish wine for generations, Rioja can still be superb.
スペインの赤、また高級ワインの代名詞といえば何といってもリオハ。その特徴は、ふくよかなコクときめ細やかな口当たりと複雑なバニラ香を含んだ香り高さにある。特に古樽でじっくり時間をかけて熟成されるグラン・レセルバクラスの赤ワインは、他のどの産地のものとも違う奥行と風格があり、アタックの強い新興ワインには決して醸し出せない独得のスタイルだ。

エブロ川沿いの3つの地区
産地総面積66,000ha、幅東西100km、最も高い標高で900mに至るスペイン屈指の銘醸地。エブロ川沿いの3つの産地に分かれている。

北岸:リオハ・アラベサ(20%)

  • 面積:13,178 ha:山間の斜面に段々畑や小さな区画が点在
  • 標高:600~650m
  • 降水量:450~600mm
  • 平均気温:ー3~15℃
  • 土壌:95%が粘土石灰質土壌
  • 気候:大西洋気候、地中海性気候
  • 特徴:リオハ地域では最も北に位置。行政的にはアラバ県に属しながら、リオハワインの生産地に含まれる地域で、バスク人の土地でもある。畑は南向きの高い斜面上にあり、土壌は95%が粘土石灰質で、色濃く芳醇、果実味の素晴らしい、若飲みタイプから熟成向きタイプまでの赤ワインが造られる。
  • メモ:大西洋気候と北に聳えるカンタブリア海の影響を受け(カンタブリア山脈が不要な湿度と冷気を遮断するものの)、他の2つの地区に比べると湿度があり気温も低い。歴史的銘醸ワイナリーやウルトラモダンなワイナリー建築のある独特の風景も魅力で、ワインツーリズムにおいては国際的な基準ともなるエリア。

最上流:リオハ・アルタ(42%)

  • 面積:27,881 ha:平地で大きな区画が多い
  • 標高:450m
  • 降水量:450~600mm
  • 平均気温:ー4~22℃
  • 土壌:粘土石灰質、粘土鉄、沖積土
  • 気候:大西洋気候
  • 特徴:エブロ河の右岸と左岸の一角にあり、標高が高く起伏のある地形から高い酸、フレッシュさ、アルコールは控えめで熟成向きの赤ワインが造られる。モザイクのような土壌から、リオハのクラシックブレンドやテロワールワインも産出される。
  • メモ:世界的にも百年ワイナリーが最も密集している地域であり、スペイン語発祥の地として知られるユネスコ世界遺産サン・ミラン・デ・ラ・コゴリャのユソ修道院とスソ修道院がある(最も古いカスティリャーノ/スペイン語とバスク語の記録がある)。夏の平均気温は15~22℃!

下流:リオハ・オリエンタル(38%)

  • 面積:25,191:平地で大きな区画が多い
  • 標高:500m
  • 降水量:450~600mm
  • 平均気温:ー3~15℃
  • 土壌:粘土鉄、沖積土
  • 気候:地中海性気候
  • 特徴:リオハの中心部ログローニョの東側にある地区でかつてはリオハ・バハと呼ばれていた。エブロ川両岸にあり、ナバーラ県の町村も含まれる。山脈から遠ざかるためほとんどは平地、かつほかの2地区に比べてより地中海性気候の影響を受けるため気温も高め。こうした地理的特徴から、アルコール度数の高いロゼと赤ワインが造られるが、主にブレンド用または日常用。