カタルーニャの美しい時間、ピカピカ

「ワインと何を合わせて楽しめばよいか分からない」という方に、ぜひ参考にして欲しいのがこちら。スペインカタルーニャ地方タラゴナの家族経営のワイナリー、ビンス・パドロでのテイスティングを兼ねたピカピカ*の一コマです。美しい盛り付けを見て「こんなの自分ではできない!」と驚く前に、よーくご覧ください。ひとつひとつはとっても簡単な素材でできています。

写真上のようなものはちょっと難しく感じたとしても、こちらはいかがでしょうか?

ハモンセラーノは買ってきたものを盛り付けるだけ、スモークサーモンはオリーヴオイルとワインビネガー、粒コショウ、ディルで軽く合えて、お気に入りのポテトチップスをお皿に並べてさあ出来上がり。大好きな食器ときれいなランチョンマットで見栄えはぐっと上がります。デザートだって、ヨーグルトに季節のフルーツを乗せるだけで十分。

ワインはお手軽な赤、白、カバが似合います。ビンス・パドロの面々は赤ワインに氷を入れてますね。手をかけているようで手をかけない。それもピカピカの極意。現地のワイナリーのようなワインの楽しみ方を取り入れてみませんか?

★ピカピカって何?と思った方はこちらの記事をどうぞ →小腹を満たす夢のPica Pica

Beautiful brothers and sister of Padro family

歩けばピカソに出会うバルセロナ

ワインの旅でバルセロナに来たら、決まって宿をとるのが中世に起源を持つ旧市街、エル・ボルン地区。石造りの建物がひしめく入り組んだ路地には、人気のショップやバルが建ち並んでいます。ホテルの部屋の窓を開けるとお向かいのアパートの住人と目が合ったり(その時はHola!とご挨拶)、洗濯物が建物と建物の間にはためく南欧らしい風景にわくわくし、仕事で来ているのにこの町の一員になったような気がするから不思議です。

ピカソ美術館

そんなエル・ボルンを歩いていたらピカソ美術館を見つけました。手掛かりは「Museo Picasso」と書いた小さな黒看板だけなので知らなかったら見落としてしまいそうですが、中には4,000点にも及ぶピカソの作品が少年時代から晩年まで時系列で展示されています。入いって早々パンチを喰らう少年ピカソの写実力。有名な青の時代やキュビズム、75歳のときに描いたというベラスケスの「ラス・メニーナス」の連作58枚に目がくらくら。新たな表現を求めて変化し続けた天才画家のエネルギーに心臓がバクバクしっ放しですが、中世の貴族の邸宅だったという立派な建物も魅力です。

Museo Picasso
住所:C/ de Montcada, 15-23, 08003 Barcelona,Spain
Tel. +34 932 56 30 00

ピカソの壁画

大聖堂目当てに観光客が集まるお隣のゴシック地区では、ピカソの壁画に出会えます。カタルーニャ建築協会の壁に描かれた3作の絵がそれですが、知らなかったら落書きだと思って通り過ぎてしまいます。天才画家の絵が風雨にさらされたまま広場にあるなんて驚き。

歩いているだけで芸術に触れられるバルセロナに乾杯!

Picasso Wall
住所:Plaça Nova, 5 08002 Barcelona, Spain

ガリシアのポップコーン!

Camarones Gallegos

スペイン沿岸部でワインのおつまみといえば茹で海老。水揚げしたばかりの小海老てをさっと塩茹でするだけだからもう絶品です。地中海に面したバルセロナではカバ(カタルーニャ地方の高品質スパークリングワイン)と、南部アンダルシアではフィノタイプのシェリー(辛口シェリーの一つ)とともに流し込むのがご当地スタイルですが、なかでも北国ガリシア地方のカマロネス・ガジェゴス(Camarones Gallegos)の美味しさは忘れられません。

大西洋に面したガリシアの冷涼な気候と冬の荒い波は、さながら日本海を思わせます。ぷりっと締まった身と濃厚な味はこの海が育んだもの。ワインは地元リアス・バイシャス産のアルバリーニョと合わせるのが流儀です。「わたしたちのポップコーンは美味しいのよ。いつでも食べに来て!」と言うワイナリーの人々言葉に甘えてまた訪問したら、旬は終わってもうどこにもないと分かりがっかり。カマロネスが食べたいなら冬に行きましょう。

ワインなら例えばAdegas Valmiñor

Valmiñor Albariño
Entroido Blanco

ブリティッシュ・プライド!歓喜のアフタヌーンティー

Digby Fine English

日本でも定着しつつあるアフタヌーンティー。ホテルのフェアでも取り上げられることが多くなり、桜やハロウィンなど季節感を取り入れたものや和風のアレンジが利いていて華やかですが、私が胸躍るのはスコーンと紅茶、シャンパーニュのシンプルなアフタヌーンティー。例えばイギリスの新進気鋭のワイナリー、ディグビー・ファイン・イングリッシュ(Digby Fine English)が素敵です。

「さあ、テイスティングしよう」と招かれたのはご自宅。玄関の扉を開けると、焼きたてのスコーンの香りがします。ダイニングルームはシックにコーディネートされていて、上質のテーブルクロスがかかったテーブルには、手作りのスコーンにチップトゥリーのブルーベリージャム(日本でも手軽に買える英国王室御用達アイテム)、いつも決まったお店で買うというクロテッドクリームと、彼らの造る最高の英国産スパークリングワインが並んでいます。大人の上質。やっぱりイギリス人は素敵だなと見惚れていると、「そうだ。お花を飾らないとね」とウィンクして、壁の色と同じ黄色のバラを持ってきてくれました。

*****

歴史的にずっとワインの輸入国だったイギリスが、冷涼な気候を生かして本格的なスパークリングワインを造るようになったのは2000年代に入ってからのこと。最新の設備投資をしてシャンパーニュと同じ伝統製法で向き合った結果、きめ細かいクリーミーな泡と酸が素晴らしいイギリスならではのスパークリングワインになりました。「これまでアフタヌーンティーの最後はシャンパーニュ以外あり得なかったけど、これでやっとすべてを英国産で通すことができるようになったんだ!」とは、昔年の思いが交錯したイギリス人の心からの歓喜の声なのです。

さて、私がイギリスにいた1990年代は、人と会えば「Would you like a cup of tea?(お茶はいかが?)」と聞かれたものでした。日常生活ではマグカップにティーバックという飾らないスタイルがお決まりですが、今ではコーヒー党も増えたイギリスで、おもてなしはアフタヌーンティーという所に文化が表れていて素敵です。美しい公園があちこちにあるイギリスでは、ピクニックにアフタヌーンティーもいいですね。美味しいスコーンと紅茶とスパークリングワインがあれば、他に演出はいりません。

朝食が美味しい国ドイツ

小麦の味がするパンが美味しいドイツはパンの国。だからパンの種類も豊富で、その数は軽く千を超えるとか。そんなバリエーション豊かなパンを使ったドイツのサンドイッチが絶品です。

日本のようにささっと食べられる麺類や丼物にあたる食べ物があまりなく、ファストフード以外で「小腹を満たす」ことが難しいヨーロッパでは珍しく、ドイツならサンドイッチがあるという安心感。そのうえ海外ではあまりクオリティが期待できないキオスクでさえ、ツヤツヤと新鮮な野菜に色んな種類のハムやチーズ、スモークチキンやサーモン、プリプリの小海老に酢漬けの魚、ふんわりと焼けた卵といった具材が惜しげなく挟まれてショーケース一杯に並んでいます。
余談ですが、意外なことに美食の国のイメージがあるフランスではこうはいかないから不思議。

さて、ドイツでホテルに泊まったら、朝食は自分でパンや具材を選んで作ります。このとき絶対にトライして欲しいのが、必ず置いてあるレバーペーストとジャムをパンに“重ね塗り”するシンプルなスタイル。日本ではあり得ない組み合わせに驚かれますが、これが絶品。さらに好きな具材を挟むのもよし。濃く淹れた紅茶に良く合います。

わたしがこの食べ方を知ったのは、ドイツの友人を訪ねてユーロレールパスでヨーロッパを旅した学生の頃。あまりの美味しさに病みつきになりましたが、こんなシンプルな食べ物には本場の食材が必要なので、日本では滅多に作る機会がありませんでした。ワインの仕事でまたドイツを訪れるようになって、飛行機に乗る前から楽しみにしていたのがドイツのサンドイッチです。

バルセロナのレストランで建築探訪

「そこはピカソが座った席だよ」と言われてびっくり。背面の壁を見ると、確かに”Pablo Picasso”という金のプレートがはめ込まれていました。朝からワインの試飲し続けてもう午後3時。さあランチだと連れてきてもらったのが、バルセロナのバルセロネータ地区にある「7 Portes(セッテ・ポルテス)」です。

1836年創業の老舗、時代を動かした芸術家や大物政治家、映画俳優も訪れたという逸話と、魚介類やパエリアなど伝統的なカタルーニャ料理で観光客にも人気のレストランですが、建築探訪にもおすすめです。もともとは19世紀中頃に活躍した実業家ジョゼップ・シフレの大邸宅。「イザベル2世通りに美しい外回廊のあるパリのような建物を建てて住みたい」と憧れて建てたというだけあって、邸宅のほか、オフィスと豪華なカフェで構成され、そこに出入りするために7つの扉(7 Portes)がありました。

十代のピカソがこの建物に住み、近くの美術学校(La Llota de Mar-中世の貴族の館を改装したコンベンションホール)に通っていたミロも常連で、ダリやスペイン王室、チェ・ゲバラやゴルバチョフ元大統領、映画スターまで、多彩なセレブリティが愛した古き良きバルセロナを留めるセッテ・ポルテス。彼らはここで何を思い何を語り合ったのでしょうか。

外回廊のテラス席で寛ぐもよし、クラシックな設えの個室や半個室で落ち着いてフォーマルな食事をするのもよし。海に近いので、食後のそぞろ歩きもまた気持ちよいものです。

7 Portes
 Tel. +34 93 319 30 33
 Email:reserves@7portes.com
 住所:Passeig Isabel II, 14. Barcelona 08003

“Simple is Best”の鏡、ヒルダ

ヒルダ/Gilda

新鮮な食材が艶々していて美味しそうですね。串に刺したフィンガーフード、ピンチョスが有名なバスク地方で、最初に誕生したと言われるのが「ヒルダ」です。口に入れるとアンチョビの強い塩味とピクルスの酸味がギュッと広がるこの完璧な組み合わせ。

ピリッとしていて旨みがあり、しょっぱい。まるでリタ・ヘイワースが演じた『GILDA』(1946年公開の映画。同名で宿命の女ヒルダが主人公)のように・・・、ということでこの名が付けられました。

このレシピが誕生したのは1940年代のこと。サン・セバスチャンに新しくバル(Bar Casa Vallés)をオープンしたヴァレス兄弟が、オリーブの実とギンディージャ(バスク地方の青唐辛子のピクルス)、アンチョビをワインに添えて提供していたところ、ある日常連客のホアキム・アランブルが3つまとめて串に刺して食べたのが始まりです。「あー、早く食べたい!」って感じだったんでしょうね。

これ以降、バスクには串に指した(ピンチャール/pinchar)ピンチョスが広がり、多彩なレシピが考案されてきました。

シンプルなレシピだけに素材が命。今回ご紹介するレシピはサン・セバスチャンのレストラン、アラッツのシェフ、イケル・サバレタ氏が2023年に来日した際に、最高のアトゥン(ツナ)の缶詰とアンチョビがあるからと特別に教えてくれたアレンジレシピです。

材料:
 オリーブの実
 ギンティージャ
 アンチョビ・フィレ
 アトゥンの缶詰(無ければ不要)
 エキストラバージンオリーブオイル

1 オリーブの実一つ、ギンティージャ一本、アンチョビフィレ一切れ(ここまでが普通のヒルダ)、あればアトゥンの身の順番で串に指す。
2 上質のエクストラバージンオリーブオイルでマリネする。 
3 チャコリやビール、スパークリングワインと合わせて口中調理したら完成!

【TIPS】スペイン産のマグロの缶詰は、余計な味付けのない素材そのものの味とゴロゴロとした塊のマグロが特徴です。実はこちらの材料、すべて私の方で最高のものを準備できるので、いつの日かみなさんにおすそ分けさせていただきます。お楽しみに!

ARATZ
 Tel. +34 943 219 204
 Email: info@restaurantearatz.com
 住所 : Igara bidea 15 20018 Donostia – San Sebastián, Gipuzkoa 

日本でも三重県の多気にオープンしたVISONでARATZの料理が楽しめます!

お花のようなプチカドゥ

こんなギフトの形もありますよ、という小さな贈り物のご提案です。

日ごろから何かと世話を焼いてくれる友人に、ちょっとしたプレゼントがしたいなと思って包んでみたら「あら、かわいい♪」。相手や目的に合わせてギフトを選ぶのは難しいものですが、いい感じに決まったらこちらの気分も上がります。

身近な人へのさりげない「ありがとう」は、心の負担にならないようなワインが最適。つまり、気楽に飲めて万人の口に合いお値段的にも手ごろなものが良いですが、見た目の華やかさが大切です。

例えば季節を問わず使えるのがこのワイン。まるで花束みたいな幸せ色のロゼ・スパークリングワインです。グラスに注ぐとロゼの色合いがきれいで、お花のようなアロマとかわいらしい果実味が溢れます。辛口なので料理も合うから、普段の食卓に添えればお花を飾ったみたい。

ところでこのプチカドゥ。お届け先は、いいお年頃の男友達です。日本では男性にお花を贈るのはかなりハードルが高いですが、ワインならキュートな見た目に少し戸惑いながら、きっと美味しく飲んでくれるでしょう。

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生産者:サンテロ
生産国:イタリア
ワイン名:ピノ・ロゼ フラワーボトル ヴィーノ・スプマンテ
ブドウ品種:ピノ・ビアンコ、ピノ・ネロ
タイプ:ロゼ・辛口

このシリーズにはビタミンカラーのオレンジのお花ラベルのスプマンテ(イタリア語でスパークリングワイン)もあって、こちらはシャルドネ主体の辛口です。ギフトボックスに2本並べるとかわいいんだろうな。

絶品、ドイツのリースリングスープ

リースリングスープ/ Riesling Creme Suppe

ドイツを代表するスープの一つ、リースリングスープ。シナモンを一振りすれば休暇シーズンの始まりを告げる最高のスターターに早変わりと聞いたことがありますが、世界最高峰の白ワインがベースになっているなんてさすがリースリングの故郷だなと最初は驚きました。私は運よくワインの買い付けを生業としていたこともあり、人生で最初に口にしたリースリングスープはクロスター・エーバーバッハのレストランで出されたものでした。クロスター・エーバーバッハといえばカビネット発祥の地。ドイツの銘醸ラインガウ地方でも圧倒的な存在感を放つ、千年の歴史を受け継ぐ元シトー派修道院のワイナリーです。そのクロスター・エーバーバッハのリースリングがベースになり、濃厚なクリームとワインの酸味のバランスが誠に絶妙。初めて知るこのシンプルなスープのあまりの口溶けの良さと品に、ただ茫然となった思い出の味です。

材料:
 玉ねぎ・・・小~中サイズ1個
 バター・・・大さじ1
 辛口リースリング・・・800ml
 ベジブロス(野菜の出汁)・・・750ml
 クリーム・フレーシュ・・・大さじ4
 小麦粉・・・大さじ擦切り2
 生クリーム・・・150 ml
 パセリみじん切り
 塩、白コショウ
 クルトン
 サフラワーオイル・・・大さじ3
 シナモンパウダー、ジンジャーパウダー(お好みで)

1.  玉ねぎをみじん切りにして透明になるまでバターで炒め、リースリングを加えて1分ほど煮る。
2. ベジブロスを加えて温める。
3. クリーム・フレーシュに小麦粉を入れ、よく混ぜてからスープに加える。
4. 時々かき混ぜながら10~15分温める。
5. 生クリームを加え、さらに10分温める。
6. パンを切り油で揚げてクルトンを作る。
7. クルトンをキッチンペーパーに取り、お好みでシナモンやジンジャーのパウダーを振りかける。
8. スープに塩と白コショウを加えてミキサーにかける。
7. クルトンとみじん切りにしたパセリを加えたら完成。

【Tips】このスープは濃厚さが命。サラサラと薄くなっていたら、火にかける時間を長くして凝縮させましょう。また、ベジブロスを減らしてリースリングを増やせば、よりワインテイストなスープに仕上がります。リースリングの質にこだわれば、さらにワインラバー垂涎のスープになりますね。

***

クロスター・エーバーバッハのレストランは、古いワインセラーがリノベーションされていて雰囲気も抜群。常時ビジターも受け入れていてガイド付きのツアーやワインテイスティング、歴史的修道院で結婚式も挙げられるので、ドイツ観光に行くことがあれば足を延ばしてみることをお勧めします。

Kloster Eberbach
 Tel.+49 (0) 6723 9178-100
 Email: nfo@kloster-eberbach.de
 住所:65346 Eltville im Rheingau

Dani’s キッチン ~醸造家さんの絶品料理

ワイン業界はお料理上手が多いですが、ワインの醸造家にも腕利きの“料理人”が多いです。こちらはスペイン・ナバーラ地方の自然派ワイナリー、ボデガス・アスル・イ・ガランサのオーナー醸造家、ダニー・サンチェスさん。スペインは男性だけの料理倶楽部があり、ダニーさんも地元の倶楽部に所属しているのだとか。どれも素材が生きたシンプルなものばかりで、醸造家の料理は特にワインが進みます!Que aproveche!

Fideua con mariscos – 魚介のフィデウア

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Alubias con almejas- 白いんげんとあさり

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Trucha a la Navarra-ナバーラ風マスのグリル
Picanton asado con patatas al romero -若鶏のローストとローズマリーとポテト
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