そこに息づく歴史と献身でしか醸せない熟成美

Bodegas Ximénez-Spínola

生産者:ボデガス・ヒメネス・スピノラ
生産国・産地:スペイン・ヘレス地方

“ペドロ・ヒメネスという品種に特化したヘレス・デ・ラ・フロンテーラのブドウ栽培一家”。自らを称してこう表現する謙虚さからは全くもって想像しがたいが、古くからスペイン王室御用達を務める高級シェリーの蔵元であり、名前こそ明かせないがヨーロッパのセレブリテを顧客としてきた名門である。


最大の謎は、21世紀になるまで商品が極甘口シェリー、ペドロ・ヒメネスしかなかったこと。たった一つの品種からたった一つのワインを創業以来300年間も造り続けて来たとなれば、それが今やどんなに貴重なワインだとしても「なぜ?」と知りたくなる。ましてや酒精強化すらしていないとなれば、ソムリエに説明するだけでも一苦労なのだが、まずは理屈抜きで飲んでみて欲しい。この色合、そもそも並のペドロ・ヒメネスではない。透明感と輝きはまるで琥珀のようだし(琥珀は太陽の石と言われるパワーストーン)、液体はサラサラとしてどこまでも滑らか。そして香りは圧倒的。このワインを前にすれば、驚き、憧れ、言葉を無くしてしまう。磨き抜かれた品質の裏には、昔ながらの手仕事と細部に至るまで妥協を許さないという姿勢がある。そんなこだわりの一つ一つがとにかく圧倒的だから、飲めばうんちくが聞きたくなるというパラドックスが待っている。


今や本物の極甘口シェリーを造る唯一無二の存在となったこの蔵元で、現役最古のソレラシステムが設置されたのは1918年。以来、継ぎ足し継ぎ足し使い続けること遂に百年を迎えた(2018年、復刻版の記念ボトルが限定リリース)。長い時の流れを感じながら、今この瞬間を味わい尽くす。そんな大人の瞑想にぴったりのワインは、収穫から完成まで実に15年という時間を費やして造られている。この究極のペドロ・ヒメネスから派生した規格外の商品の数々にもぜひ注目して欲しい。

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