ピノ・ノワール・プレコスと小鳥のおはなし

Photo by Vicente van Zalinge

この世界には本当にたくさんのブドウ品種があるもので、ワインバイヤーになって十数年、イギリスのスパークリングワインを買い付けて初めて出会ったブドウ品種がピノ・ノワール・プレコス(Pinot Noir Précoce)です。直訳すると「早熟のピノ・ノワール」という意味になりますが、ピノ・ノワールとは異なるという説もあり、その実態はマイナーゆえにまだ解明されていません。

これについて議論するのが本来私の仕事ですが、それはどなたかに任せるとして、ここでは「ピノ・ノワールとの違いは何ですか?」と造り手さんに尋ねたときの回答から豊かな環境を想像させてくれる素敵なお話をご紹介します。自然に寄り添うのがワイン造り。そんなワイナリーの日常が見えるようで癒されます。

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“イングランドでは通常ピノ・ノワールよりもプレコスの方が理想的なレベルまで熟しやすい品種です。完熟を迎えられるので、プレコスからは赤果実のはじけるようなアロマと風味、そして濃く深い赤色が得られます。

しかもプレコスはピノ・ノワールより約3週間早く熟します。イングランドではしばしば秋に雨が降りますが、その前に収穫できるためボトリティス菌のリスクが少ないというメリットもあります。

さらに鳥害のリスクも少ないです。というのも、プレコスが完熟する時期はブドウ以外のたくさんのベリーが実を結ぶため、鳥は他にも食べるものが尽きないのです。” by Hattingley Valley

Harvest in Hattingley Valley

果皮が青いですね。Précoceという呼び名が示すように原産地はフランスですが、ドイツでフリューブルグンダー(Frühburgunder)と呼ばれて赤ワインが生産されています。