三流品種をガレージで造っても美味

Bodegas y Vinedos Ponce

Juan-Antonio Ponce

生産者:ボデガス・イ・ビニェードス・ポンセ
生産国・産地:スペイン・マンチュエラD.O.

「ボバルという品種はスペインのど真ん中、ラマンチャ地方のマンチュエラやウティエル・レケナを故郷とする三流品種らしい」。なんて言われ方をされて気の毒だけど、品種の個性が顧みられることなく、量産ワインのかさましや色付けに使われていたと聞くとなるほど言い得て妙。

2006年、フアン・アントニオ・ポンセのワインを試飲したときの衝撃は忘れられない。聞けばボバルというこの品種、フランス舌のわたしには新鮮で、荒削りだけどまとまりがあって確かなフィネスを感じる。
一年に一度しかできない農作物のワイン界にもトレンドはあり、ミレニアムの激変がスペインの新潮流と言われた若い醸造家たちの原点回帰のワイン造りだ。その筆頭がポンセ。ヨーロッパのテイスターの間では噂になっていた。

代々続く栽培家の出だから地ブドウの良さは知り尽くしている。若い人が嫌う野良仕事を厭わず、醸造では品種に向き合うタイプの造り手だ。丹念に手入れされたポンセのボバルは古木が多く、だからこそ若木にはない品を湛えている。名うてのテースターをして「これがボバルなのか・・・!」と驚かせたポンセのワインは、品種のポテンシャルを見抜く目と手を抜かない仕事の賜物だ。なのに驚くほど安い。
ポンセにはボバルのほかに、幻の品種で造るワインもある。良いワインになるブドウは手間のわりに量産できないから忘れ去られていく。こんな畑をドライブ中に見つけては一軒一軒周っていくんだから、もう地ブドウの守護神と呼びたい!どんな品種でもポンセが造るというだけで信じるに値する。そんなフアン・アントニオは26歳の宣言通り、独立10年目で立派なワイナリーを建設した。

かもめの本棚 online「美しいくらし」連載

「河野さん、ワインと旅するスペインでいかがですか?」。2022年、東海教育研究所「かもめの本棚」の素敵な編集長さんとの出会いで、約20年に及ぶわたしのワインの旅がエッセイになりました。知りたい一心で足を運び手繰り寄せた素晴らしいワインの数々。そこで見聞きし感じた出来ごと。それを記憶のなかで反芻するだけでなく、何かに留めておきたい、分かち合いたいという願いをひとつの作品としてご紹介できるようになったのです。

『フランスの美しい村を歩く(トラベル・ジャーナリスト寺田直子著)』を始めとする多くのシリーズを刊行する「かもめの本棚」は、今日より“ちょっと”すてきな私にをコンセプトに、すてきな人たちに着目しそこから見えてくるすてきな世界をわかりやすく伝えることで、新しい世界への扉を開いてくれます。

『ワインと旅するスペイン』
これまで買い付けたワインは、フランス、スペイン、ドイツ、オーストリアなど9カ国、52地域。延べ1000回以上のイベントセミナーを通して造り手と向き合い、本物のワインを広める活動を行っている河野佳代さんの新連載がスタート! 旅の舞台は情熱の国スペイン。最高のワインを求めて各地を巡った、出会いの記録です。-Webマガジンより抜粋

第1回 ナバーラの砂漠が私にくれたもの(上)
第1回 ナバーラの砂漠が私にくれたもの(下
第2回 長い歴史が磨くブドウのエッセンス(上)
第2回 長い歴史が磨くブドウのエッセンス(中)
第2回 長い歴史が磨くブドウのエッセンス(下)
第3回 無名品種を見出した青年の情熱(上)
第3回 無名品種を見出した青年の情熱(中)
第3回 無名品種を見出した青年の情熱(下)
第4回 星の巡礼カミーノ・デ・サンティアゴをゆく 前編(上)
第4回 星の巡礼カミーノ・デ・サンティアゴをゆく 前編(中)
第4回 星の巡礼カミーノ・デ・サンティアゴをゆく 前編(下)
第5回 星の巡礼カミーノ・デ・サンティアゴをゆく 後編(上)
第5回 星の巡礼カミーノ・デ・サンティアゴをゆく 後編(中)
第5回 星の巡礼カミーノ・デ・サンティアゴをゆく 後編(下)
第6回 スペインの異世界ガリシア(上)
第6回 スペインの異世界ガリシア(中)
第6回 スペインの異世界ガリシア(下)

Who I am

Kayo Kono – Buyer of Real Wine

みなさんが日本のどこかでワインを手にするとき、きっと一度は私が選んだワインを楽しんで頂いていることでしょう。

私の情熱はワインを選び届けること。自分で足を運び目利きしたワインの話をするとき、とてもワクワクします。これまでワインバイヤーとして、エッセイストとして、また、ラジオやオンラインパーソナリティとしてその魅力を発信してきました。とりわけ魅了されているのは「香り」と「フードペアリング」の技法。本物のお酒には人の心を動かす力があり、そのストーリーをこれからも語り続けていきたいと願っています。

長年ワイナリーと関わっていると、作り手の想いが感じられる素敵なモノを探すこと自体がライフワークになりました。あちこちで出会ったそんな素敵なモノに囲まれて暮らすのは幸せです。ワイン以外の時間は、ピアノ、バレエ、お茶、香り、料理やインテリアデザインで瞑想と創造の時を過ごしています。J.S.A.ソムリエ、トリリンガル(日本語、英語、スペイン語)。 

PROFILEー 日本の酒類専門商社で17年間のワインの買い付けを経て、2020年よりパリの高級スピリッツ「ディスティレリ・ド・パリ」、スペイン王室御用達シェリー「ボデガス・ヒメネス・スピノラ」のブランドマネージャーに就任。これまで買い付けたワインは、フランス、スペイン、ドイツ、オーストリア、イギリス、ポルトガル、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニアの9カ国、52地域。延べ1000回以上のイベントセミナーを通して造り手と向き合い、本物のワインを広める活動を行っている。“美味しく食べて幸せに暮らす”を実践し、お酒をきっかけに世界をつなげている。J.S.A.ソムリエ、トリリンガル(日本語、英語、スペイン語)。

  • 1997 – 2003 エレクトロニクス系商社海外営業(欧州、ブラジル、東南アジア)
  • 2003 ⁻2020 酒類専門商社ワインバイヤー
  • 2020- ディスティレリ・ド・パリ クリエイティブ・ディレクター
  • 2020- ボデガス・ヒメネス・スピノラ ブランドマネージャー
  • 2023 – ワイン空間デザイナー