わくわくするようなストーリー

ただのアルコールといえばそれまでですが、良く造られたワインには人を感動させる力があります。

樹齢百年を超える貴重な古木、幻の品種、驚異の低収量、はたまたワイナリーの人々の素顔、ワインが生まれた土地や、そこから垣間見えるストーリー。そんなストーリーが、ワインを一層美味しく身近なものにしてくれます。

ワインを飲むのは仲間とコミュニケーションを楽しみたいから。そんなひと時の主役となる世界観のあるワインをセレクトしています。

– WINERY LIST –

唯一無二

そこにボトルがあるだけでオーラを放つ本物のお酒。時を超えて人々に愛され続けたものが芸術作品になるように、時間が磨いたお酒はアートそのもの。お酒の概念を超えた唯一無二の存在感をお楽しみください。

We holds a curated portfolio with carefully selected one & only wines and spirits from around the world.

自然派の造り手、フアシェを飲んで泣く

Domaine Fouassier

Benoit (right) and Fouassier family

生産者:ドメーヌ・フアシェ
生産国・産地:フランス・ロワール地方サンセール

初めて飲んだ時、一口で「これだ・・・!」と衝撃を受けた透明感。フアシェに出会えてサンセールの旅が終わったと思うくらい、心底魅了されている。


3種類あるサンセールはそれぞれにはっきりとした個性があるが、醸造方法は全く同じ、違うのは土壌だけ、という代物。テロワールワインは数多あれど、こういう取り組みをしてくれるとワインラバーとしては本当に痛快。テロワールがなにか知りたかったら難しい説明はいらない。フアシェを飲めばいいのだから。だから3種類、全部、できれば並べて飲む価値がある。わずか100~300メートルしか離れていない区画の違いを映し出せる造り手は飲む価値がある。


サンセールがソーヴィニヨン・ブランの産地になったのは19世紀のフィロキセラ禍以降。畑を馬で耕作していた当時、斜面の仕事は重労働で、被害を機に耕作転換が進んだ。そんなとき、進んで近隣の栽培家から畑の買い取りに応じていたのがフアシェ家だ。だから、今ではサンセール村のほとんどすべての優良区画を持っている。


きっちりと完熟したサンセールのソーヴィニヨン・ブランにはグリーンでハービシャスなアロマがない。サンセールの土壌はソーヴィニヨン・ブランに宿るミネラル感の現れ方で世界の産地と一線を画すと言われ、だからこそフアシェは区画ごとに土壌を分けてテロワールワインへと邁進した。
SO2をほとんど使わないと聞くとちょっと身構えてしまうが、こんなに果実味がきれいで安定感があるのには驚いてしまう。
現在の当主、ブノワ・フアシェはフランス人なのにバカンスを取ることがほとんどない。畑の手入れがしたいし、畑にいることが本当に幸せなんだと言う。

#わくわくするようなストーリー

テーマおまかせ

例えば生産者と話がしたくてスペイン語を覚えたほど大好きなスペイン各地のワイン、例えば愛して止まないドイツの至宝リースリング。はたまた食事に合うといえばこれ、ただし好みが分かれるかも知れないミステリアスなシェリー・・・などなど。

ちょっと尖ることもあるテーマおまかせのセレクトですが、ちゃんと美味しいワインを選びます。オーダーは「私の好きそうなワイン選んでおいて」という感じで大丈夫。

地中海の宝石マジョルカ島の自然派がこんなにきれい

4 kilos Vinicola

Francesc Grimalt and Sergio Caballero(right)

生産者:クワトロキロス ビニコラ
生産国・産地:スペイン・マジョルカ島


一人は最優秀醸造家賞受賞の醸造家(左)、もう一人はその道では名を馳せるミュージシャンで、コンビの出会いは行きつけのワインバー。ブドウ栽培者のガレージを借りて、牛乳の冷却装置を活用しながら最初のワインを仕込んだのが2006年。島でしっかりとブドウ栽培に取り組む栽培家たちと手を組んで、(この栽培家たち一人一人がまたとても個性的だ)、今も飲んでちゃんと美味しいアートなワインを造り続けている。

クワトロキロスを初めて飲んだのは2008年のバルセロナ。ドツ・ボルツというワインで、カイエット、フォゴノウというマジョルカ島の地ブドウが主体になっている。赤ワインはフルボディでも力で押してこないタイプが好き。これはド・ス・ト・ラ・イ・ク!濃くてもスルスル飲めるって本当に良いワインだと思う。そんな体験を飲み手に期待して、フランセスクとセルヒオはドツ・ボルツ、12ボルトの衝撃を浴びてくれ、とネーミングした。地ブドウ主体のワインなのにどこか帰国子女の香りがするのは、フランス品種が少しづつブレンドされているからだろう。ナチュラルワインもギリギリのものから、ちゃんとしたものまで幅広いけど、このセンスには感心してしまう。


小さなワイナリーなのにコンパクトにまとまったラインナップの広さが面白い。亜硫酸無添加のモトール、マジョルカ島の伝説の協同組合へのオマージュである島スタイルのアイランド・シンジケイト(これが絶妙に薄旨系)、一転、モダンな醸造法で地ブドウを醸したクワトロキロス、圧巻はカイエット種の女性らしさを余すところなく引き出した樽醗酵樽熟成のトップキュヴェ、年間生産量たったの700本のグリマルト・カバジェーロだ。

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衝撃の急斜面から滴るエレガンス

Weingut Schloss Sommerhausen

Martine Steinmann

生産者:ヴァイングート・シュロス・ゾンマーハウゼン
生産国・産地:ドイツ・フランケン地方

今の所1435年設立の15代目当主ということになっているマルティン・シュタイマンだが、古文書からどんどん古い資料が見つかるのでこの先は分からない。


至宝リースリングを擁するドイツワイン界にあって、リースリング以外のワインで異彩を放つフランケン地方は実は見逃せない産地。独特の形をしたボトルに入った男性的なワインで知られるが、ここゾンマーハウゼンは淑女のワインと呼びたくなる清楚な味わいが特徴だ。


今どき珍しいシンプルなラベルを侮るなかれ。控えるのは一級畑、シュタインバッハの名品たち。まともに立っていられないほどの傾斜角を持つこの畑は、眼下を流れるマイン川の反射熱を蓄熱し、冷涼地にもかかわらず毎年みごとなブドウを育てている。
対岸に見える集落はヴィンターハウゼン。冬の家という意味だ。そう、ゾンマーハウゼンは夏の家。寒冷なフランケンの地にあって、ひとびとは夏の温かさを持つこの小さな村を選んで畑を作り、ドイツ最高峰のワイン造りを行ってきた。


歴史を感じる鉄製の大きな鍵でお城の重い木の扉を開けると、すり減った石造りの階段が地下のセラーへと続いている。無数のボトルが眠る先、一番奥にあるのはトラディショナル方式のゼクトの名品の数々。この泡は一転、繊細さのなかに男性的な骨格があり、はっきりとしたミネラルに痺れる!
蝋燭を灯して暗闇のセラーを歩くと、反響する靴の音に乗せてなんだか歴史が向こうから語りかけてくるような錯覚を抱く。

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三流品種をガレージで造っても美味

Bodegas y Vinedos Ponce

Juan-Antonio Ponce

生産者:ボデガス・イ・ビニェードス・ポンセ
生産国・産地:スペイン・マンチュエラD.O.

「ボバルという品種はスペインのど真ん中、ラマンチャ地方のマンチュエラやウティエル・レケナを故郷とする三流品種らしい」。なんて言われ方をされて気の毒だけど、品種の個性が顧みられることなく、量産ワインのかさましや色付けに使われていたと聞くとなるほど言い得て妙。

2006年、フアン・アントニオ・ポンセのワインを試飲したときの衝撃は忘れられない。聞けばボバルというこの品種、フランス舌のわたしには新鮮で、荒削りだけどまとまりがあって確かなフィネスを感じる。
一年に一度しかできない農作物のワイン界にもトレンドはあり、ミレニアムの激変がスペインの新潮流と言われた若い醸造家たちの原点回帰のワイン造りだ。その筆頭がポンセ。ヨーロッパのテイスターの間では噂になっていた。

代々続く栽培家の出だから地ブドウの良さは知り尽くしている。若い人が嫌う野良仕事を厭わず、醸造では品種に向き合うタイプの造り手だ。丹念に手入れされたポンセのボバルは古木が多く、だからこそ若木にはない品を湛えている。名うてのテースターをして「これがボバルなのか・・・!」と驚かせたポンセのワインは、品種のポテンシャルを見抜く目と手を抜かない仕事の賜物だ。なのに驚くほど安い。
ポンセにはボバルのほかに、幻の品種で造るワインもある。良いワインになるブドウは手間のわりに量産できないから忘れ去られていく。こんな畑をドライブ中に見つけては一軒一軒周っていくんだから、もう地ブドウの守護神と呼びたい!どんな品種でもポンセが造るというだけで信じるに値する。そんなフアン・アントニオは26歳の宣言通り、独立10年目で立派なワイナリーを建設した。

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かもめの本棚 online「美しいくらし」連載

「河野さん、ワインと旅するスペインでいかがですか?」。2022年、東海教育研究所「かもめの本棚」の素敵な編集長さんとの出会いで、約20年に及ぶわたしのワインの旅がエッセイになりました。知りたい一心で足を運び手繰り寄せた素晴らしいワインの数々。そこで見聞きし感じた出来ごと。それを記憶のなかで反芻するだけでなく、何かに留めておきたい、分かち合いたいという願いをひとつの作品としてご紹介できるようになったです。

『フランスの美しい村を歩く(トラベル・ジャーナリスト寺田直子著)』を始めとする多くのシリーズを刊行する「かもめの本棚」は、今日より“ちょっと”すてきな私にをコンセプトに、すてきな人たちに着目しそこから見えてくるすてきな世界をわかりやすく伝えることで、新しい世界への扉を開いてくれます。

『ワインと旅するスペイン』
これまで買い付けたワインは、フランス、スペイン、ドイツ、オーストリアなど9カ国、52地域。延べ1000回以上のイベントセミナーを通して造り手と向き合い、本物のワインを広める活動を行っている河野佳代さんの新連載がスタート! 旅の舞台は情熱の国スペイン。最高のワインを求めて各地を巡った、出会いの記録です。-Webマガジンより抜粋

第1回 ナバーラの砂漠が私にくれたもの(上)
第1回 ナバーラの砂漠が私にくれたもの(下
第2回 長い歴史が磨くブドウのエッセンス(上)
第2回 長い歴史が磨くブドウのエッセンス(中)
第2回 長い歴史が磨くブドウのエッセンス(下)
第3回 無名品種を見出した青年の情熱(上)
第3回 無名品種を見出した青年の情熱(中)
第3回 無名品種を見出した青年の情熱(下)
第4回 星の巡礼カミーノ・デ・サンティアゴをゆく 前編(上)
第4回 星の巡礼カミーノ・デ・サンティアゴをゆく 前編(中)
第4回 星の巡礼カミーノ・デ・サンティアゴをゆく 前編(下)
第5回 星の巡礼カミーノ・デ・サンティアゴをゆく 後編(上)
第5回 星の巡礼カミーノ・デ・サンティアゴをゆく 後編(中)
第5回 星の巡礼カミーノ・デ・サンティアゴをゆく 後編(下)
第6回 スペインの異世界ガリシア(上)
第6回 スペインの異世界ガリシア(中)
第6回 スペインの異世界ガリシア(下)

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Buyer of Real Wine

Kayo Kono -Design Lifestyleは、パリのオートクチュールスピリッツ「ディスティレリ・ド・パリ」、スペイン王室御用達シェリー「ボデガス・ヒメネス・スピノラ」のブランドマネージャーであり、日本の酒類専門商社でヨーロッパのワインを買い付けてきたプロバイヤー、河野佳代が運営しています。取り扱うのはバイヤーの嗅覚をとらえた本物のワイン。セレクトする河野が長年にわたって造り手と向き合ってきた経験を活かし、みなさまに喜びと発見をお届けできるような世界を紹介しています。

ワインでたくさんの人と楽しい時間を過ごしたい。目指すのは、単に飲み、消費するだけでなく、選び、語り、経験を共にする「空間」を創ること。ワインを通して世界を広げ、「食べる」ことについて考えるきっかけになることを願っています。

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Who I am

Kayo Kono – Buyer of Real Wine

みなさんが日本のどこかでワインを手にするとき、きっと一度は私が選んだワインを楽しんで頂いていることでしょう。

私の情熱はワインを選び届けること。自分で足を運び目利きしたワインの話をするとき、とてもワクワクします。これまでワインバイヤーとして、エッセイストとして、また、ラジオやオンラインパーソナリティとしてその魅力を発信してきました。とりわけ魅了されているのは「香り」と「フードペアリング」の技法。本物のお酒には人の心を動かす力があり、そのストーリーをこれからも語り続けていきたいと願っています。

長年ワイナリーと関わっていると、作り手の想いが感じられる素敵なモノを探すこと自体がライフワークになりました。あちこちで出会ったそんな素敵なモノに囲まれて暮らすのは幸せです。ワイン以外の時間は、ピアノ、バレエ、お茶、香り、料理やインテリアデザインで瞑想と創造の時を過ごしています。J.S.A.ソムリエ、トリリンガル(日本語、英語、スペイン語)。

 Profile -

  • 1997 – 2003 エレクトロニクス系商社海外営業(欧州、ブラジル、東南アジア)
  • 2003 – 2020 酒類専門商社ワインバイヤー
  • 2020 – ディスティレリ・ド・パリ クリエイティブ・ディレクター
  • 2020 – ボデガス・ヒメネス・スピノラ ブランドマネージャー
  • 2022 エッセイ『ワインと旅するスペイン』(東海教育研究所・かもめの本棚 online)
  • 2023 – ワイン空間デザイナー