三流品種をガレージで造っても美味

Bodegas y Vinedos Ponce

Juan-Antonio Ponce

生産者:ボデガス・イ・ビニェードス・ポンセ
生産国・産地:スペイン・マンチュエラD.O.

「ボバルという品種はスペインのど真ん中、ラマンチャ地方のマンチュエラやウティエル・レケナを故郷とする三流品種らしい」。なんて言われ方をされて気の毒だけど、品種の個性が顧みられることなく、量産ワインのかさましや色付けに使われていたと聞くとなるほど言い得て妙。

2006年、フアン・アントニオ・ポンセのワインを試飲したときの衝撃は忘れられない。聞けばボバルというこの品種、フランス舌のわたしには新鮮で、荒削りだけどまとまりがあって確かなフィネスを感じる。
一年に一度しかできない農作物のワイン界にもトレンドはあり、ミレニアムの激変がスペインの新潮流と言われた若い醸造家たちの原点回帰のワイン造りだ。その筆頭がポンセ。ヨーロッパのテイスターの間では噂になっていた。

代々続く栽培家の出だから地ブドウの良さは知り尽くしている。若い人が嫌う野良仕事を厭わず、醸造では品種に向き合うタイプの造り手だ。丹念に手入れされたポンセのボバルは古木が多く、だからこそ若木にはない品を湛えている。名うてのテースターをして「これがボバルなのか・・・!」と驚かせたポンセのワインは、品種のポテンシャルを見抜く目と手を抜かない仕事の賜物だ。なのに驚くほど安い。
ポンセにはボバルのほかに、幻の品種で造るワインもある。良いワインになるブドウは手間のわりに量産できないから忘れ去られていく。こんな畑をドライブ中に見つけては一軒一軒周っていくんだから、もう地ブドウの守護神と呼びたい!どんな品種でもポンセが造るというだけで信じるに値する。そんなフアン・アントニオは26歳の宣言通り、独立10年目で立派なワイナリーを建設した。

#わくわくするようなストーリー

地中海のブドウ栽培家たちが話したら

4 kilos番外編

最優秀醸造家と世界的アーティストという異色のコンビが織りなすマジョルカ島の自然派ワイナリー「クワトロキロス」が、ブドウ畑の主役である栽培家たちの声を映像にまとめました。日本から遠く離れたスペインの美しい島で、どんなことを考えてどんな風にブドウを栽培しているのでしょう?

動画のタイトルは『Vinas, Ovejas y Ovnis ~ブドウ畑、羊と未確認飛行物体』。島の栽培家たちが話す言葉はマジョルキン(マジョルカ語)、かつすごい訛り。

それではどうぞ!★動画:Vinas, Ovejas y Ovnis(制作:4 kilos)

LUNA (月) シモ・アブリル/ブドウ栽培家 (0:00)

ブドウ樹、剪定、植樹、その他すべての畑仕事に月が影響しているのは明らかだ。なぜだって?月の運行に従って剪定をしたら樹液が良く出て、よく成長し、よく根付いたことを実際に確認したからそう断言できる。例えば畑で月の動きや兆候を見ながら植樹した 9000 本のうち、駄目になったのはたった一本だけだった。果実、根、そのほか全てにおいて適切な日を見極めると 9000 本のうち失敗はわずか一本だったんだ。それが何だって? ただのミスだったのか、もともと植樹した時から状態が悪かったのか?9000 本だぞ?少なくないだろう。普通なら失敗率は 2%だ(※約 180 本)。


満月にかけてブドウの樹はより多くの房をつけ、月が欠けていくときはブドウの樹が成長するときだ。だから弱い樹に手はかけない。まずしっかりとした幹を作り、新月に剪定することを心掛けている。別の言い方をすれば、ブドウの樹は新月の時に最も生命力 が弱まる。満月にかけてはよく涙を流す(※樹液がよく滲み出ることの比喩)。だから剪定はできれば月齢が 高くなるとき(※つまり新月に向かうとき)にしたいんだ。新月に向かうときに樹液が下がってくるからだ。月の 影響は、満月に向かうとき樹液は上がりよく涙を流し、新月にかけては樹液が下がりあまり涙を流さない。

天気に変われとお願いはできないが、月の運行に従うことは天気にお願いごとを聞いてもらことと同じだ。そうでなければ天気と闘うことになる。そう、単純なことなのさ。

TERRENO(土壌) トニ・ベルトゥラ/ブドウ栽培家 (2:55)

「Son Roig/ソン・ロイグ」は 25ha の畑で主な土壌はカルベルメル。そこに石と砂利が混ざっている。カルベルメル土壌はより多く石を含んだものとより粘土を多く含んだもの(粘土質土壌の色は黄色から灰色)の2種類に分けられる。ここから下の方はカルベルメルだけの土壌で、石は全く無い。だから畑の性質は全く異なる。石は畑に太陽の熱を通さないからブドウの樹は常にフレッシュで、それがカルベルメル土壌と合わさることで土の中は常に冷んやりしている。「石とこの土壌は日光を通さない」というのがこの畑の特徴だ。


畑では昔のように働くことを心掛けている。今では以前より畑の状態が良くなってきたと実感しているよ。われわれで4代目で、祖父と父親と一緒にこの方法に戻したのさ。前は石灰と硫酸銅を混ぜなければならなかったが(※ボルドー液のこと)、今では畑仕事が楽になり、ワイン造りも楽になった。


もう一度強調させて欲しい。私にとって一番大切なのは土だ。70%は土で決まる。ここ「Son Roig」はブドウ栽培とワイン造りに特権を持つ区画なんだ。

OVEJAS(羊) シャウメ・ソン・ロセジョ/羊飼い(5:07)

わたしたち家族はずっと羊と一緒に暮らしてきた。私は今年で47歳になるが、その間ずっと羊と共にいる。羊たちはカルベルメル土壌(ティエラ・ロハ/赤土)にいるとよく草をはむ。ティエラ・ロハの草はティエラ・ブランカ(白土)より美味しいからだ。それにティエラ・ブランカで草を食べるより、カルベルメルの石を舐めるのが好きだ。カルベルメルの石の方が草より美味しいからだし、もっと広い野原に放っても気が付けばカルベルメル土壌がある場所に集まってくる。

むかし、老人に言われたことがあるよ。「カルベルメルで羊を放牧したらミルクはあまりとれない。とれたとしてもその場でチーズになってしまうぞ」と。ティエラ・ブランカだとミルクはよく採れるがチーズはできない。凄い違いだろう?うちは3ヘクタールの放牧地のうち半分がカルベルメル、残り半分がティエラ・ブランカだ。この辺りでは本当に大きな違いを生むんだ!例えばあっちがティエラ・ブランカ、その小道一つ向こうがティエラ・ロハ(カルベルメル)だ。こんな狭い所でも違いがあるだろう?さあ、一緒に見に行こう。

COBERTURA VEGETAL(植物の覆い) ビエル・ナダル/ブドウ栽培家 (6:40)

冬場のハーブは畑を温めながらもくもくと耕作を続けるものだ。人間が畑を耕す必要はなく、土中の虫たちもまた仕事をしてくれる。春に向かって畑が成長期に入ると雑草は枯れ、天然の肥料になる。夏の畑では競争がない。なぜかというと虫たちが夏眠につくから競争が起きない。夏、ハーブは畑から何も吸収せずに枯れてしまう。こうして畑では何も問題が起こらず健やかでいるんだ。

ある日、藁を敷いた他の人の畑を歩くことがあった。藁で畑の中を涼しくしているんだなと思ったが、ハーブがあればそもそも藁を敷く必要がない。こうした畑仕事をしなくなってもう3年になるが、何も変わったことは起きていない。これが一農民である私が畑で見つけたとても“不可思議”なことだ。私にはこの汚い畑よりもっと整っていて美しい畑を持っている知り合いがたくさんいるが、彼らが私の畑を見ても普通のことが何も見つからないようだ。92歳になる父はこう言う。「この何もしていない畑。まるで昔の畑のようだ」と。

今、私はとても幸せだ。畑に散歩に行き、「ああ!なんて素晴らしいブドウだ!」と思うことができるからだ。素晴らしいブドウがそこにある、これこそが答えだ。以前は「ああ、ベド病だ。畝にベド病が出た」と騒ぎ、「うろたえるな。耐え凌ぐんだ」と自分に言い聞かせていたものだ。こうなるとブドウの葉は検査され、有機栽培で禁止されている物質を使っていないかも検査された。使ってなんかいないのに。

もはや私たちに検査は必要ない。今年に入って、他にも何人か畑仕事をしないことにした栽培家がいる。私の畑がとても健全なのを見て、辞めたのだ。ある日彼らが私にこう言った。「もうシラーはやめたよ。枝が長くなり過ぎるし、成長し過ぎるからね」と。これから少しずつでも、皆がそうするようになるよ。

OVNI(未確認飛行物体) ジョアン・デ・ソン・スアウ/農家(9:12) 

俺は畑で宇宙人を見た~。本当に本当だぜ~って延々と語っています!笑

オリーブオイル探しの旅、これで終わる

Pago de Valdecuevas

生産者:パゴ・デ・バルデクエバス
生産国・産地 : スペイン・カスティーリャ・イ・レオン

オリーブにも品種があり、産地でも味わいはずいぶん違う。パゴ・ デ ・ バルデクエバスはアルベキーナ種100%、圧倒的な凝縮感、ボディがあるのに、全体的にフェミニンなエクストラ ヴァージンオリーブオイル。これがあれば料理の質はぐっと上がるし、使っているだけでそもそも気分が上がりっぱなし。


造るのは何世代も地域の産業に貢献してきた地元の名士、マルティン家。「最高級のオリーブオイルを造る」と、調査から実に8年の歳月をかけて設立した140ヘクタールの自家オリーブ農園は、そのど真ん中に圧搾所があり、収穫してからたったの30分以内に圧搾できる。それだけでも本気度が伝わってくるが、それがカスティーリャ・イ・レオンと聞けばなおさらだ。


スペインのオリーブオイルといえばメッカは南部アンダルシア地方。ところが、なんとこの農園は北西部カスティーリャ・イ・レオン地方の標高約800メートルの高地にある。 冬に厳しく冷え込む気候から 一見オリーブ栽培には向かないように思われるが、 実はこれが味わいのバランスを決める鍵。 あくまでも最高級品にこだわり、 土壌や気候条件、 オリーブの樹の遺伝的特徴までも研究し、 遂にスペインを代表するアルベキーナ種がこの地に適合することを見出した。

Albequina


“わたしたちがお届けするオリーブオイルは、 プレミアムエクストラヴァージンオリーブオイルのみ。 常に完璧なオイルを造るために、 自家農園、 最新設備、収穫後 30 分以内の圧搾、 限定生産、受注ごとの瓶詰めにこだわっています。”

#わくわくするようなストーリー

Gazpacho ダニーのガスパチョ

お料理上手の醸造家、アスル・イ・ガランサのダニーのレシピ

ガスパチョは暑い夏を乗り越えるわたしのよき相棒!スペイン、アンダルシア地方発祥のスープです。食欲をそそるトマトの赤い色、身体を冷やしてくれる野菜たち。郷土料理は本当に上手くできていると思います。

日本でもいろんなレシピがありますが、やっぱり本場が一番。
お料理上手の醸造家、アスル・イ・ガランサのダニーのレシピをご紹介します。

Stock image

材料(4人分):
 熟したトマト ・・・・2個
 ピーマン(緑)・・・・1個
 パプリカ(赤)・・・・1個
 にんにく ・・・・・・1片
 きゅうり ・・・・・・1本
 玉ねぎ ・・・・・・・1/2個
 オリーブオイル ・・・300ml(スペイン産のエクストラ・バージン オリーブオイル)
 バゲット ・・・・・・スライス1枚
 お酢 ・・・・・・・・0.25L (できればシェリービネガー)
 水 ・・・・・・・・・100ml
 塩少々

作り方:
材料を適当な大きさに切り、ブレンダーかミキサーにかけます。裏ごしにかけるとさらに口当たりが洗練されます。ポイントはオイルやビネガー。良いものを選ぶと、より風味が増します。私の秘訣はトマトの芯をくり抜いて、あらかじめ冷凍しておくこと。そうすれば、飲みたいときにいつでも冷たいガスパチョに癒されます。

WINE

Vitis de Azul y Garanza, Garnacha Blanca 60%, Viura 40%

有機栽培で丁寧に育てた健康なブドウのミネラル感と果実味。少しボディがあるので冷やしてガスパチョと合わせると、最高のアペが始まります。Easy peazy!

ケルトの村の手作りの暮らし

La Setera Quseeria Artisanal y Bodega

Everything is artisan

生産者:ラ・セテラ
生産国・産地:スペイン、カスティーリャ・イ・レオンで アリベスD.O.

ラ・セタラにはもう憧れしかない。手づくりの暮らしが見えるのだ。カスティーリャ・イ・レオン州の西の端、フォルニージョス・デ・フェルモセリェ村に入ると、「Queso y Vino Artesano Degustacion y Venta -手づくりチーズとワイン 試食・試飲販売」と記された手書きの道案内のすぐ先に、機械化とは無縁のどこかくたびれた小さなボデガが家族の住まいと一体になっている。表の目立たない看板が唯一、ここがワイナリーであることを伝える目印だ。この村は独特のケルトの石積みでできていて、ボデガの外壁も石の壁が印象的。スペインというよりイギリスの田園風景を思い起こさせる。ここでは何もかもがひっそりと慎ましい。

Here we are! ーボデガに着いた

小さくても仕事は丁寧。ワイン造りやヤギのミルクを使ったチーズ作りの工程では、細部に目を配らせ、地域のビオダイバーシティを豊かに育みながら日々の暮らしを営んでいる。ラ・セテラという名前は、ワイナリーがある渓谷から頂いた。この小さな谷は、圧倒的な景観を織りなすあの全能なるドゥエロ川に続いている。ボデガのストーリーは1994年、サラとフランシスコの若いカップルがこの地に一目惚れしたことに始まる。生物学者だった二人は、いつか人生の早い段階でサステイナブルな生き方がしたいと思っていた。だからまず、セテラの谷でヤギのチーズを作り始め、2003年には自分たちでワインも造るようになった。二人がはじめたこの小さな活動によってコミュニティがうまれ、知らず知らずのうちに地域の自然文化遺産を守り、人口の流出を防ぐという重要な役割を担っていた。

Children must have grown up by now
Bodega and stonewall

ワイナリーはアリベス・デル・ドゥエロ自然公園のなかにあり、豊かな生態系の恵みを受けている。秘境ゆえに手つかずの土地は状態がよく、生産性を求める農業生産で土が疲弊しているということもない。サラとフランシスコは一方的に搾取するのが嫌いなので、ワインも無理のない範囲で造るから、どうがんばっても年産わずか一万本程度。その分クオリティが高く、もちろんワインに化学的な処置や人工的な対策を施すことは一切ない。畑の古木もみごとだ。

Beautiful old vines
Tasting, tasting and tasting to select the ones

WINE

La Setera Tinto Joven, Juan Garcia 100%
La Setera Tinto Roble Seleccion Especial, Turiga National 100%

La Setera Tinto Crianza, 100% Juan Garcia
La Setera Tinto Crianza Seleccion Especial, 100% Touriga Nacional

パワーのなかにフィネスを感じる赤ワインは、良い意味で野趣溢れ濃厚でいて、きめが細かい。
どちらも忘れられないハイクオリティ。ラベルの図柄にお気づきたろうか?そう、石積みがモチーフになっている。

CHEESE

ラ・セテラのチーズも、ワインと同じように製造工程はいたってナチュラルだ。ヤギのミルクは近隣の農家から毎日新鮮なものを調達している。つまりヤギたちは100%アリベスの土地のなかで草を食んでいて、こんな環境で育ったヤギだから、チーズが美味しくないわけがない。

Cualquier alimento es más sano, cuanto menos procesos haya tenido para su obtención. Sara y Francisco ー食べものは加工しないほどより健康的。

Cheese shop
Sara’s queseria

<行き方>
フォルニージョス・デ・フェルモセリェ村へはフェルモセリェから車で20分。

<アリベスに泊まる>
La Casa de los Arribes lascasadelosarribes@hotmail.com (Tel. 34 629 74 95 52)
アリベス・デル・ドゥエロ自然公園の案内も充実しているし、アニマルセラピーなども体験できる。

Azabache 災いから身を守るスペインのパワーストーン

黒光りする美しい黒玉(こくぎょく)、アサバチェは災いから身を守ると信じられてきたパワーストーン。サンティアゴ・デ・コンポステーラ旧市街を、大聖堂のあるオブラドイロ広場に向かって歩いていくと、おおくの宝飾店が軒を連ねていることに気がつきます。通りの名はルア・デ・アシベチェリア/Rua de Acibecheria、アサバチェ職人通りです。かつてここは、アサバチェを扱う店だけを集めた専門通りでした。

Medallón de Azabache de Oles, Asturias, motivos celtas, Azabache y plata -wikipedia

この石は、ジュラシックツリー(2億年 – 1億5千万年前から現存する世界最古といわれる種子植物)が長い年月を経て化石化したもので、英語では黒琥珀(black amber)ともいわれますが、琥珀のように樹脂ではなく樹木そのものの化石です。主な産地はスペイン北部、アストゥリアス地方。海岸沿い一帯に分布し、独特のやわらかい光沢でジュエリーとして愛され、その人気は16世紀ころに頂点に達しました。

巡礼にちなんでホタテ貝や十字架をモチーフにしたものもありますが、ガリシアの魔除けアイテム、フィーガを型どったものや、デニムなど現代の装いにも身につけやすいブレスレットやネックレスなどもあって、ちょっとしたおみやげにぴったりです。地元では今でも子どもが生まれたときに、健やかなる成長と厄除けを願って贈られるパワーストーン。昨今では、アサバチェ職人通りでなくても売られていますが、せっかくなら通りの古いお店で買い求めるのも、また思い出になるでしょう。もしかしたら偶然入ったお店が、通りで最も古いお店かも知れません。Good luck!

Arribes DO アリベス、大自然に抱かれる小さな産地

アリベス。なんてクールな名前。イベリア半島北部を流れる重要な川、ドゥエロ川をはさんだ先にみえるのはポルトガル。カスティーリャ・イ・レオン州最西端にあるこの小さなワイン産地には、およそ150kmに渡ってドゥエロの大河が流れ、花崗岩の土壌が削られてできた渓谷や峠道など独特の景色を描いています。おなじ渓谷地帯でも、ガリシア州のリベイラ・サクラが女性的なら、こちらは男性的なニュアンスがあり、大地のエネルギーが下から突き上げてくるような迫力です。

from Mirador looking down the river Duero

<気象データ>
夏の最高気温:40度
冬の最低気温:-9.5度
平均年間降雨量:561.41mm
平均年間日照時間:2,899時間

<ブドウ畑>
総面積:337ha
標高:700m.
土壌:花崗岩、スレート
白品種:マルバシア・カステリャナ、ベルデホ、アルビーリョ
黒品種:フアン・ガルシア、ブルニャル、フフェテ、メンシア、テンプラニーリョ、ガルナッチャ

アリベスワインの歴史は長く、ローマ人か、恐らくそれ以前にフェニキア人がドゥエロ川をポルトガルのオポルト港からさかのぼっていったと考えられています。ブトウ畑は切り立った渓谷とそのなかにわずかに広がる平原にあり、原産地呼称員会に登録されている17軒のワイナリーが固有品種でワインを造っています。アリベスのワインは、ポルトガルのミーニョ地方とスペインのガリシア地方、両方のキャラクターを持ち合わせた印象があって、とてもエキゾチック。ポルトガルとスペインの国境にあることから二つの国の歴史が融合し、また同時に外部から隔離された環境であるがゆえに、多様なブドウ品種の宝庫になっています。

生産の90%が赤ワインという赤の産地。かつては単一品種、フアン・ガルシアのワインが主流だったのですが、今ではブレンドもされるようになり、その際、地元品種を60%以上使うことが義務づけられています。フアン・ガルシアのワインはプラムやカシスなど黒果実のニュアンスがあり、樽熟成によってバニラ、ユーカリ、リコリス、ミネラルやナッツなどをともなって、滑らかさのなかに力強さが備わります。

Vineyards over there

アリベス・デル・ドゥエロ自然公園/Parque Arribes del Duero

アリベス・デル・ドゥエロ自然公園はスペインのサラマンカ県とサモラ県の間、ポルトガルとの国境に位置し、ポルトガル側ではドウロ自然公園として保護地区に指定されています。ユネスコ・メセタ・イベリア保護区にも指定される、イベリア半島最大の自然保護地区(1,132,607haだから長野県くらい)の主役は、川と渓谷。最大500メートルの高低差のなかにスペインで最も多くの渓谷群がみられ、トルメス川とドゥエロ川が出合うアンバサグアス渓谷、閃長岩の巨大岩、ペーニャ・ゴルダス、高低差200メートルの大滝、ポゾ・デ・ウモスといった壮大な景色がつぎからつぎへと現れます。

アリベス(Arribes)という地名は、もともと海岸を意味するラテン語のadripa-aeに由来しているらしい。確かに前述のドゥエロ川やトルメス川のほかにも、アゲダ川、フエブラ川、ウセス川、エスラ川など、いくつもの川のコースがあって、文字通り「ドゥエロの川岸」たる堂々とした地形を形成しています。

植生も豊か。ジュニパー、虫こぶのオークの木、セイヨウヒイラギガシ、コルクの森が広がっています。また、この高地にはめずらしい地中海性気候の植生もみられ、ブドウ、オリーブ、アーモンドの木々、動物群ではボネリークマタカ、イヌワシ、コンドル、エジプトハゲワシ、ハヤブサ、ワシミミズクなどの猛禽類が大空をゆったりと旋回している姿がのびやか。哺乳類ではカワウソ、テン、キツネやイノシシなども生息しています。

Stock image By Sam Bark

自然公園についたら徒歩や自転車で辿れるたくさんのルートが整備されているし、ミラドール(展望台)も要所要所にあるからどこからでも絶景が楽しめる。アリベス・デル・ドゥエロの川下りクルーズも最高。

Stock image By Daniel Llorente
Stock image By Raimond Klavins
An English countryside like cozy little village

自然保護地区には、ローマ時代にさかのぼる中世の村、フェルモセリェがある。周辺の小さな村々にはケルト文化の痕跡がいたるところにあり、緑豊かで穏やかな風景はスペインというよりイギリスの田園と見まがう風景。

羊のチーズ(もちろん手づくり)やサラマンカの希少種サヤゲサ牛の子牛肉、ラム、イベリコ豚が名産品。オルナソ/Hornazoというミートパイのような伝統的なパンや、ガリシアでお馴染みのタコとじゃがいも、ハム類も見逃せません。アリベスのワインで乾杯!

Soup of “Bacalao” -バカラオとひよこ豆のスープ
Sayaguesa Veal -サヤゲサ牛。味付けは塩だけ

<行き方・楽しみ方>
おすすめはフェルモセリェに宿泊してアリベス自然公園を楽しみ、ワイナリー見学をするコース。軒先で小さなお店を開いているワイナリーもあり、手づくりのチーズやはちみつ、パンなどを売っていてそのどれもが絶品。

RUTA del Vino 現在の登録ワイナリーはこちら:
 Arribes del Duero Sociedad Cooperativa
 Bodega Frontio
 Bodega el Hato y el Garabato
 Bodegas Pastrana
 Bodega Ribera de Pelazas
 Bodega Romanorum
 Bodega Viña Romana
 Hacienda Zorita Natural Reserve

<フェルモセリェ/Fermoselleに泊まる>
5つ星ホテルから、長期滞在に向いたアパートメントまで、スタイルに合わせた宿が充実しています。

Hacienda Zorita Wine Hotel & Organic Farming
14世紀の修道院をリノベーションしたリゾートスパホテル。トルメス川を見下ろす絶景ポイントにあり、グルメのレストラン、ワインスパ、セラーでのワインテイスティングが楽しめます。ウェブサイトで紹介されているツアープランも最高。ウェブサイトには見たら絶対に行きたくなってしまう動画があるので必見。

“1366樽のワインが眠るマルケス・デ・ラ・コンコルディアでのワインテイスティングをして、
ユネスコ世界遺産にも登録されているサラマンカの歴史地区へショートトリップ。
ファミリー向けには徒歩10分にあるホテルの農場ツアーをして、チーズの試食や田舎料理を楽しむのもおすすめ。夕食はホテルのレストラン、ソリタズキッチンで最高の料理と地元産の最高のワインを堪能したら、のワインバーで食後の寛ぎのひとときを”(筆者訳) 出展:SLHウェブサイトより引用

La Casa del Regidor
分厚い花崗岩の壁と太い木の梁のある18世紀の住宅、ラ・カサ・デル・レヒドールは、大人2名で7000円弱とリーズナブル。国立公園のなかにあり、美しい渓谷を眺めながらテラスで朝食がいただける。隣は12世紀に建てられたヌエストラ・セニョーラ・アスンシオン教会。近くのプラサ・マヨールには、季節の良い時期なら外で寛げる心地の良いバルもある。

Pallozas in Cebreiro セブレイロのかわいいおうち

温かみのある自然素材の家

オ・セブレイロ村で巡礼路より気になるのが、パロザスと呼ばれる茅葺屋根のおうちです。温かみのあるかわいいフォルム。これが古代ケルト人のおうちで、ほんのつい最近、20世紀の終わりまで実際にひとが住んでいたと聞くと、ますます興味がわいてきます。

紀元前3世紀に古代ローマ帝国がイベリア半島にやってくるまでは、現在のスペインの大部分にケルト人が暮らしていました。鉄器時代のイギリスの円形集落や、ケルト人が築いたカストロ文化(青銅器時代からローマ文化に取り入れられるまでのイベリア半島北部の文化)そのままに、円形の石の土台を、ガリシア語でパラザ/pallazaという茅葺の屋根でおおって家畜とともに暮らしていたそうです。

Castro in A Guarda By Henrique Pereira

20世紀も後半になってようやくこの地方にも新しい建築資材を運び込むことができるようになり、使われなくなったパロザスのいくつかはガリシアの村や、レオンのアンカレスの谷、アストゥリアス西部に移築保存されているそうです。

オ・セブレイロ村のパロザスはというと、博物館になっているものがあります。低い壁と茅葺屋根は過酷な山暮らしに合わせて工夫されています。重たい雪と風雨に耐えるための高く厚みのある屋根、凍えるような寒さをしのぐために窓はほとんどなく、熱を逃がさないようにしています。山の傾斜や土地のくぼみを利用して排水も考えられています。花崗岩やスレート、オーク材、藁など土地の材料を使ったかわいいおうちは、標高1300メートルの自然のなかにやさしく溶け込んでいます。

Palloza, Pedrafita do Cebreiro By amaianos
Pedrafita do Cebreiro By Bjørn Christian Tørrissen

キリスト教の時代になり、サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼の要所となっても、ケルトのパロザスが取り壊されずにずっと共存していた奇跡に、村人の愛を感じます。Me gusta!

<STAY -セブレイロに泊まる>

Hotel O Cebreiro (informacion@hotelcebreiro.com, Tel 34 982367125)

もと町役場兼刑務所!らしいです。

Hostal Meson Anton (Tel 34 638 35 07 53)

Queso Cebreiro DOP コック帽のようなかわいいチーズ

ケソ・デ・オ・セブレイロ

ケソ・デ・オ・セブレイロはガリシア州北東部のルーゴ県で作られている牛乳が原料のフレッシュチーズ。コック帽やホワイトマッシュルームのような独特の形と少し酸味のある味わいが特徴です。2008年にはEUの原産地認証/DOPも受けています。

布の上で丸一日乾かすことで酸が上がり、水分が抜けてかわいらしい形に仕上がります。水分のないしっかりとしたフレッシュチーズなので、一般的なフレッシュチーズよりもリコッタチーズや密度の高いカッテージチーズに似た食感になり、洋梨や桃のコンフィチュール、トーストや蜂蜜と一緒に食べるのがおすすめです。切り分けたフレッシュチーズに、とろりとしたコンフィチュールや蜂蜜は見た目にも美味しさをそそります。

Stock image写真はイメージです

スペインで最も高価だったマイナーチーズ

起源は9世紀の終わり頃、サンティアゴ巡礼を行く巡礼者のために建てられたホスピス(病院や休憩所)で奉仕活動をしていた修道僧が、オ・セブレイロ村に定住したことにはじまります。オ・セブレイロといえばケルト文化が残る標高1300メートルの集落。巡礼者は前の宿泊地ベガ・デ・バルカルセからでも、高低差700メートルの急な登り坂をひたすら歩くことになります。盗賊などもいたかつて、ここは「フランス人の道」最後の難所と言われていました。

千年以上の長いチーズの歴史も20世紀の終わりには消滅の危機を迎え、地元の婦人会が家庭用に細々と作るのみとなりますが、信仰が今より盛んだった時代は、オ・セブレイロ村で骨休めをした巡礼者が味わい、その美味しさを各地に伝えていました。そのなかにはカトリック両王、カルロス3世やポルトガルのイサベルの名もあり、スペインからポルトガルに大量に輸出された記録があります。18世紀の年代記にはスペインで最も高価なチーズと記載され、同じく千年の歴史を持つブリー、マロワル、ヌーシャテルに次いでヨーロッパでは4番目に高価だったという記録も残されています。

Brie, Maroilles, Neufchâtel and Cebreiro, all made with cow milk

なんでも手に入る昨今でも、賞味期限の短さゆえに輸入のハードルは高く、現地に行かないと食べられない食材です。職人が作る高品質のチーズを扱うマドリードの専門店、フォルマヘ/Formajeでは、カルロスさんというチーズ職人さんのケソ・デ・オ・セブレイロを愛情いっぱいに紹介しています。

“わたしたちがカルロスを好きなのは、チーズ職人になる前は牧場主をしていたので、牛乳のことを知り尽くしているからです。職人になると決めてすべて家畜を売り払い、チーズ作りに専念しながら、ガリシアの牛乳、つまり隣人たちの牛乳を素晴らしいチーズに変えて価値をもたらしています” 

出展:Formajeウェブサイトより引用

悩み多きは現代人も同じ。宗教心からだけでなく、自分への挑戦やスポーツ感覚での参加も含めて、サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼者の数は年々増えています。1991年にガリシアの特産品に認定されたことや、続く1993年に「フランス人の道」が世界遺産に登録されたことも人気を後押しし、ケソ・デ・オ・セブレイロは消滅の危機は免れました。現地に行ったら味わってみたい産品です。

ケソ・セブレイロのレシピ 

原産地呼称委員会、Queixo de Cebreiro のウェブサイトに、ケソ・セブレイロのベストレシピ50が紹介されています。残念ながら写真がなく、国内向けのため言語はスペイン語とガリシア語のみですが、前菜のサラダから、パスタ、魚料理、お肉、デザートまですべて網羅されていて圧巻。地元ならではの多彩なアイデアはとても参考になります。

全部は無理なので、そのなかから簡単で面白そうなものを一つご紹介します。リコッタで代用してみてはいかがでしょうか。また、クリームスープとしてだけでなく、少し濃厚に仕上げてソテーした白身魚のソースにしてもよさそうです。

ケソ・セブレイロとレタスのクリームスープ

<材料(4人分)>
レタス ・・・・・・2個
オ・セブレイロ ・・80g
牛乳 ・・・・・・・500ml
じゃがいも ・・・・2個
バター ・・・・・・40g
塩、パン、パセリ

<作り方>
じゃがいもは小口に切り塩水でゆで、レタスは蒸しておく。じゃがいもとレタスに牛乳、チーズ、バターを入れてブレンダーで攪拌し、塩で味を調える。パセリのみじん切りをのせて、トーストしたパンを添えていただく。温かいままでも冷やしても美味しくいただけます。

Que aproceche!