ケソ・デ・オ・セブレイロ
ケソ・デ・オ・セブレイロはガリシア州北東部のルーゴ県で作られている牛乳が原料のフレッシュチーズ。コック帽やホワイトマッシュルームのような独特の形と少し酸味のある味わいが特徴です。2008年にはEUの原産地認証/DOPも受けています。
布の上で丸一日乾かすことで酸が上がり、水分が抜けてかわいらしい形に仕上がります。水分のないしっかりとしたフレッシュチーズなので、一般的なフレッシュチーズよりもリコッタチーズや密度の高いカッテージチーズに似た食感になり、洋梨や桃のコンフィチュール、トーストや蜂蜜と一緒に食べるのがおすすめです。切り分けたフレッシュチーズに、とろりとしたコンフィチュールや蜂蜜は見た目にも美味しさをそそります。
スペインで最も高価だったマイナーチーズ
起源は9世紀の終わり頃、サンティアゴ巡礼を行く巡礼者のために建てられたホスピス(病院や休憩所)で奉仕活動をしていた修道僧が、オ・セブレイロ村に定住したことにはじまります。オ・セブレイロといえばケルト文化が残る標高1300メートルの集落。巡礼者は前の宿泊地ベガ・デ・バルカルセからでも、高低差700メートルの急な登り坂をひたすら歩くことになります。盗賊などもいたかつて、ここは「フランス人の道」最後の難所と言われていました。
千年以上の長いチーズの歴史も20世紀の終わりには消滅の危機を迎え、地元の婦人会が家庭用に細々と作るのみとなりますが、信仰が今より盛んだった時代は、オ・セブレイロ村で骨休めをした巡礼者が味わい、その美味しさを各地に伝えていました。そのなかにはカトリック両王、カルロス3世やポルトガルのイサベルの名もあり、スペインからポルトガルに大量に輸出された記録があります。18世紀の年代記にはスペインで最も高価なチーズと記載され、同じく千年の歴史を持つブリー、マロワル、ヌーシャテルに次いでヨーロッパでは4番目に高価だったという記録も残されています。
なんでも手に入る昨今でも、賞味期限の短さゆえに輸入のハードルは高く、現地に行かないと食べられない食材です。職人が作る高品質のチーズを扱うマドリードの専門店、フォルマヘ/Formajeでは、カルロスさんというチーズ職人さんのケソ・デ・オ・セブレイロを愛情いっぱいに紹介しています。
“わたしたちがカルロスを好きなのは、チーズ職人になる前は牧場主をしていたので、牛乳のことを知り尽くしているからです。職人になると決めてすべて家畜を売り払い、チーズ作りに専念しながら、ガリシアの牛乳、つまり隣人たちの牛乳を素晴らしいチーズに変えて価値をもたらしています”
出展:Formajeウェブサイトより引用
悩み多きは現代人も同じ。宗教心からだけでなく、自分への挑戦やスポーツ感覚での参加も含めて、サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼者の数は年々増えています。1991年にガリシアの特産品に認定されたことや、続く1993年に「フランス人の道」が世界遺産に登録されたことも人気を後押しし、ケソ・デ・オ・セブレイロは消滅の危機は免れました。現地に行ったら味わってみたい産品です。
ケソ・セブレイロのレシピ
原産地呼称委員会、Queixo de Cebreiro のウェブサイトに、ケソ・セブレイロのベストレシピ50が紹介されています。残念ながら写真がなく、国内向けのため言語はスペイン語とガリシア語のみですが、前菜のサラダから、パスタ、魚料理、お肉、デザートまですべて網羅されていて圧巻。地元ならではの多彩なアイデアはとても参考になります。
全部は無理なので、そのなかから簡単で面白そうなものを一つご紹介します。リコッタで代用してみてはいかがでしょうか。また、クリームスープとしてだけでなく、少し濃厚に仕上げてソテーした白身魚のソースにしてもよさそうです。
ケソ・セブレイロとレタスのクリームスープ
<材料(4人分)>
レタス ・・・・・・2個
オ・セブレイロ ・・80g
牛乳 ・・・・・・・500ml
じゃがいも ・・・・2個
バター ・・・・・・40g
塩、パン、パセリ
<作り方>
じゃがいもは小口に切り塩水でゆで、レタスは蒸しておく。じゃがいもとレタスに牛乳、チーズ、バターを入れてブレンダーで攪拌し、塩で味を調える。パセリのみじん切りをのせて、トーストしたパンを添えていただく。温かいままでも冷やしても美味しくいただけます。
Que aproceche!