生産者:金紋秋田酒造
生産国・産地:日本・秋田県大仙市
こんな残念なことがあるだろうか。香り高い酒が主流の日本ではあまり理解されないという、金紋秋田酒造の熟成酒。ところが日本酒に対する固定観念のない海外では、食中酒としてトップソムリエや美食家たちから高い支持を集めているという。
「米を主食にするアジア人が米を食べるとき、必ずおかずと一緒に食べるのはなぜか」。そんな素朴な問いからスタートした三代目当主、佐々木孝。大手を筆頭に37軒の酒蔵が割拠する秋田県という土地で、佐々木が蔵を継いだとき、そこに新参者が入り込む余地はほとんどなかった。秋田の酒蔵の中で下から数えた方が早かったという小さな蔵元は、結果として固定概念から自由になったのだ。
やっぱり米。熟成で得られる深い香りと凝縮した旨味漂う長い余韻は食事の楽しみを増幅し、ペアリングにおけるすべてのマイナスをカバーする。 熟成に対する感度はワインの文化がある欧米の方が高い。これが舌の肥えた欧米市場で認められたのが理由である。
日本酒の本質である旨味を鍛えあげながら、この土地にしかできない酒造りに精進してきた果実が彼らの熟成酒。その深い旨味は多彩な食材の味覚をいっそう豊かに広げ、これまでになかった食文化を見せてくれる。発酵文明のひとしずく。ワインラバーなら間違いなくこの魅力を味わい尽くすことができるはずだ。
★金紋秋田酒造 / Kinmon Akita Sake Brewery→ Short tour
熟成酒の世界
お酒の究極の楽しみ。それは熟成。
手間暇かけて丁寧に造られたお酒には人を感動させる力がある。そんなお酒が、さらに“時間”という得難い味方を得たとしたら?
ワイン、ウィスキー、ブランデー、熟成の魅力。
長い眠りから目を覚ました酒は、ある時ふいに私たちの前に現れる。
もしかしたら造り手本人ですら、
生きている間には味わうことができないかも知れないという浪漫を漂わせながら。
「こんな日本酒があっても良いじゃないか」
この蔵を想うとき、三代目当主、佐々木孝の声が聞こえてくるようだ。